備忘録 安芸国の宵深く

7月末のはなし。広島の薬研堀でかみさんとひとしきり飲んだ後、土産に地元の酒を買いに行こうということになり、大和屋酒舗という地酒屋に。札幌では見たことがない広島県産の地酒一升2本を購入、一本ずつ抱えて店を出た。

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仕事の関係で宿泊先は別々のホテル。かみさんを先に帰した後、なんとなく後ろ髪引かれ並木通りから外れた日本酒を出すうどん屋に吸い込まれた。カウンター席に落ち着き、さて何を飲もうかとメニューを広げたところ、椅子の上に置いた一升瓶が床に落ちた。ぐしゃりという音が聞こえ、何重ものぷちぷち包装が施されたビニール包装の内側に液体を感じることができた。「やっちまった」お店を汚してはいけないと思い店員さんに「すみませんが、処分してください。うっかり酒瓶を割ってしまいました」と梱包されたまま割れた一升瓶を手渡した。

広島地酒の飲み比べを楽しみにしていたかみさんに、とりあえず「ごめん。ホテル戻る前にもう一軒寄った酒場で酒瓶割っちまった」とメッセージしたら、おそらく翌日の仕事の準備をしていただろうかみさんは、激おこぷんぷん丸絵文字を送り返してきた。「さぁて、どうすっぺか」と微酔した頭を悩ませていたところ、若大将が「いいお酒割っちゃいましたね。私も日本酒が好きなのでお客様の気持ちがよくわかります。うちも大和屋酒舗からお酒を仕入れていて、他人ごととは思えなくて。これほんの気持ちですが」と鯵の寿司2貫とポテトサラダを差し出してくれた。「いえいえ、こちらこそ余計な仕事増やしてしまいすみませんでした」と謝り、しばし世間話を続けた。こちらが北海道から来ていることを知ると、更にウェルカムモードが増幅。彼の言葉の端々に広島愛を感じ取ることができ、若くして暖簾を守っているのもわかるなぁ、などと感心してしまったのだ。

看板メニューのうどんを〆に頂き、数杯重ね、お愛想に。席を立つと先ほどの若大将が出てきて「今度広島に来る機会がありましたら、是非に」と、コースターの裏に自分の行きつけで仲間の店を書いてくれた。「広島の食材と地酒を愉しむなら、これらの店は間違いありません。酒は同じく大和屋酒舗さんから仕入れています。これは雨後の月の相原酒造さんが作った発泡酒です。お店からですので是非北海道に持ち帰ってください」と微紅のラベルが貼られた日本酒小瓶を手渡してくれた。

酩酊し、広島県人の親切心が身に染みた一夜だった。が、iphoneのメッセージを見返すと激おこぷんぷん丸絵文字が3つに増えており、ホテルへの帰り道、安芸国の夜空を仰いだとさ。

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