トランプ大統領が金正恩をつかまえて、ロケット・マンと揶揄したことが侮辱=宣戦布告と受け止められた。『李外相はニューヨークで記者団に対し「わが国に対して最初に戦争を仕掛けてきたのは米国であることを全世界は明確に記憶すべき」と発言。「米国がわが国に宣戦布告をした以上、わが国には対抗手段をとる権利がある。それには、わが国の領空外を飛行する米国の戦略爆撃機を撃墜する権利も含まれる」と話した。』(ニューズウィーク日本語版)と報じられている。穏やかではない。
日本の一部では金正恩を「エリンギ」或いは「黒電話」と、見た目由来の蔑称でからかう向きもいるのに比べ、ロケット・マンとはずいぶんカッコいいではないか。むしろ、あれだけ打ち上げ花火のようにパンパンミサイルをぶっ放していたら、ロケット・マンの称号=賞賛と受け止めてもらってもいいのではないだろうかと思ってしまう。

エルトン・ジョンが1972年に発表したアルバム、ホンキー・シャトーにRocket Manという曲がある。
シングルカットされビルボード6位のヒットを記録した。エルトン・ジョンが作曲し、黄金期の相棒バーニー・トーピンが作詞を担当した佳曲で歌詞はこんな感じだ。
フライトの前に妻とお別れだ
今は午前0時9分
これからたこのように空たかく飛ぶ
地球と妻が恋しくなる
何故なら宇宙探検は一人ぼっちだから
長い宇宙の旅が待っている
任務を遂行し戻ってきたら
みんなは俺を見直すに違いない
俺はロケットマン
宇宙をただひとりで旅した男
火星で子供を育てるのは無理だ
とても寒いんだ
誰も住むことなんかできない
途方もない科学のおかげさ
これが俺の生業さ
ロケットマン ロケットマン
バーニーが当時読み込んでいたレイ・ブラッドベリの刺青の男という短編集にRocket Manという短編があり、そこから歌詞の着想を得たというエピソードを読んだことがある。短編は、危険に魅惑された宇宙船乗りの夫を持つ妻と息子が、やきもきしながら夫を見守るという内容で、最後に宇宙船乗りの男は太陽に突っ込んで死んでしまう。ストーリーのエッセンスを歌詞に盛り込み、悲哀感たっぷりのメロディーが受けたのだろう。1969年にはデビッド・ボウイのSpace Oddityが発表され、時代感として宇宙に大きなロマンを求めていたことも後押しした。
1991年にTwo Rooms : Celebrating The Songs Of Elton John & Bernie Taupin”というエルトン&バーニー・コンビへのトリビュートアルバムが発売され、ケイト・ブッシュが同曲のカバーを歌っている。レゲエ調にアレンジされなかなか趣深い。
トランプ大統領が金正恩を、太陽に突っ込んで死ぬRocket Manに重ね合わせ、含みを持たせるほど機知に富んでいるとは思えないけれど、洋楽ファンとしてあのひと幕を愉快に眺めていたのである。
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