
カミさんがいない日の夕メシは自分でこっそり魚の煮つけを作る。正確にはこっそりというわけではないのだが、煮つけを極端に嫌うカミさんに何となく背徳感と勝利の喜びを感じながら包丁を握る。会社帰りのスーパーで値下がりしている魚があると、なお良い。この時期値引かれる頻度が高いのはカスベやカレイやニシンなど。鯛のおかしらやブリにもよく出くわす。運よく今日は2割引きの子持ちババガレイを見つけた。ついでに本マグロの切れ端と明日の昼飯用ボンゴレビアンコに使う厚岸産アサリも半額で手に入った。
見切られたババガレイに塩をさっと振りかけ、熱湯で湯引きしたのちに、常備調味料の八方美人(出汁で【醤油1:みりん1】を煮込んだ液体)に酒を足して軽く煮つける。好みによっては生姜も一緒に煮込み、ししとうがあれば彩もきれいになる。ものの20分もあれば照りのある美味い煮つけができてくる。この時期の子持ちババガレイは抜群にうまい。

魚の煮つけだけではさびしいので、一品加えよう。今晩はいぶりがっことクリームチーズが冷蔵庫にあったので、マイ定番のがっこチーズを拵え、常備しているポテトサラダと先ほど手に入れたマグロを漬けにしてを添えてみる。

加えて美味しい酒があればいうことは無い。冷蔵庫を漁るとこれまた運よく福井の酒がでてきた。4日前に近所の鮭乃丸亀から仕入れた常山-春の霞酒だ。するすると何事もなかったように悪びれもせずのど元を通り過ぎるやばい奴だ。こいつはラッキー。

こんな日は7時のNHKニュースを見終わると、テレビを消してオーディオのスイッチを入れることになる。CD棚からJJ CaleのNaturallyとElmore JamesのDust my BroomとJohn HiattのSlow TurningとTedeschi Trucks BandのRevelatorを引っ張り出した。スライドギターを聴き倒そうという魂胆だ。ボトルネックは日本酒との相性がいいと勝手に考えているし、いずれの盤も飲酒のスピードを加速させる効果がある。デレク・トラックスのMidnight in Haremの美しいギターソロに差し掛かる頃にはソファで寝落ち寸前だ。

そうこうしているうちにカミさんが帰ってきた。酒が強かにまわってゴキゲンな様子。「起きてんのかオヤジ、コノヤロー」と軽く頭を小突かれ、わたくしは我に返り、ひそかなお愉しみはこれにておしまい。オーディオを消し、テレビをつけて、日常が再開した。
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