
自分と同じ年の噺家。昭和の爆笑王初代林家三平の二男、お兄さんが正蔵(こぶ平)、お姉さんが泰葉という芸能サラブレッド。2年前には笑点に抜擢されたものの、大喜利の出来が酷過ぎ座布団ゼロ枚で終わることもしばしば。三平の答えは5割身内ネタ、4割ダジャレ、1割雑談と揶揄されているほど。2002年に真打昇進も噺のほうも噛み噛みで腕が一向に上がらないと落語好きにこき下ろされる。はたから言われるほど2代目三平は酷いのか?それを検証したく、札幌公演に足を運んだ。
会場は教育文化会館。想像していたよりも入りが良く、1階席はほぼ満席。当日券を求める客もちらほら。さすがに若い客はほとんどいないけれど、40~60代、特におばさまたちが目に付く。広いステージに台座付きの座布団がぽつんという高座。開口一番は前座桂竹もんの与太郎噺、他行。古典落語ですっとぼけたやつは与太郎と相場が決まっている。竹もんの与太郎は迫真の演技。落語鑑賞になれている客も多いらしく、たまに合いの手も入る。
20分で真打登場。枕は北海道の兄弟子林家とんでんへいのことや笑点の裏話など。一つ目の噺は本妻の妾に対するやきもちを面白おかしく演る権助魚。乗ってくると、三平は迫力が増す。テレビではベビーフェイスのお茶の間いじられキャラの印象が強いが、15年以上真打を務めていることが伊達ではないことがすぐわかる。ただし、よく噛むのはご愛敬か。お客さんのノリも悪くなく、女形の真似で三平が品を作ると大爆笑を誘っていた。
インターミッション後に2本目。枕は木久扇さんのラーメン、太平さんのカレーがまずいという笑点でも定番のネタ。ほどなく2本目の古典が始まった。主な登場人物がすべて実直な善人という人情噺の井戸の茶碗。三平もさらに乗ってきて、声のボリュームが高い。高潔な武士の魂を見事に演じ切っていたのが印象的だった。
2本の古典をみて、三平の魅力に触れた気がする。笑点で三平をディスるのは戦略的な仕掛けということがよく分かった。要は番組の落ちとして予定調和的に三平から座布団を奪い、詰る。そこで、視聴者を含む一同の留飲が下がり、一種のカタルシスを共有する。逆に言うと、三平は鈍感力を発揮し、持前の打たれ強さで視聴者に「あいつ、しょうもねぇなぁ」という優越的な立場を提供することにより、身近な噺家として戦略的に親近感を持たせているのであろう。

東京出張の際は上野広小路の宿に泊まる。理由の一つは鈴本演芸場や広小路亭が近いから。何度も通ううちに好きな噺家もできてくる。お気に入りは柳家 三三、春風亭 一蔵、桃月庵 白酒、金原亭 馬久というところか。三三の古典落語の表現力は圧倒的だし、一蔵と白酒は枕だけでとにかく大笑いしてしまうし、馬久は若いし活舌よくしゃべり、笑顔がかわいい。鈴本で夜の部をビール片手に鑑賞して、そのままアメ横の大統領やカドクラや大山に繰り出し余韻に浸っていると、北海道には希薄な江戸の町人文化の名残をリアルにうらやましく感じたりするのだ。
コメントを残す