備忘録 ロバート B. パーカー

本日、自分が編集に携わる機関誌の売れ残り分を引き取りに北大生協に立ち寄ると、洋書バーゲン開催中。棚に目をやると、パーカーのBlue Eyed Devilを見つけた。2010年パーカー没後に出版された作品で、未読だったので手に取った。

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パーカーは何と言ってもスペンサー・シリーズが有名。自分も好きで原作と翻訳併せて、大体読み漁っている。平易な英語とテンポ良い筋立て。アイルランド系の主人公スペンサー、恋人のユダヤ系スーザン、相棒の黒人ホークなどの人物描写が秀逸。初期~中期にかけての作品にはスペンサーが料理するシーンが頻出しそれがまた魅力的。代表作の初秋では朝から粉を練ってコーン・ブレッド焼いて、小腹が空いたらBLT(ベーコン・レタス・トマト)サンドウィッチを拵え、夜食はポーク・チョップと松の実ライスちゃっちゃと作る。金持ちの美食家とは違うジャンルの美食家で、贔屓にしているダイナーで喰らうハンバーガーひとつとっても、主張と拘りがある。読んでいるとおなかがすくシリーズでもある。

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スペンサーの料理を紹介する書籍もある。前島純子さんの「探偵たちの食卓」はいかにも80年代的でバブリーな文体が今となっては懐かしいが、探偵の食事にスポットライトを当てたという点で素晴らしい。「スペンサーの味覚には少々疑問を持っていた」と一刀両断するなんぞ、なかなかできる芸当ではない。もう一つはスペンサーの料理のみに焦点を定めた「スペンサーの料理」。手の込んだ料理は一切ないので、レシピも簡単なものが載っているだけだが、ファンならずとも面白く読める。たとえば「ゴッドウルフの行方」でスペンサーが夜食に食べるのは「Six fat German sausages, and rings of green apple dipped in flour and fried in the sausage fat. Two big slices of coarse rye bread with wild strawberry jam.~分厚いドイツソーセージ6本に小麦粉でまぶし青りんごをソーセージの余分な油で揚げたもの。それに野イチゴのジャムを挟んだ粗いライ麦パン2切れ。」という感じだ。

 

 

村上春樹だったか、パーカー作品を読むのはなじみの酒場に顔を出す感覚に似ていると評したことを記憶している。しょっちゅう顔を出しても飽きずにその場を愉しむことができ、しばらくぶりの訪問ではお店の方から懐かしがってこちらに寄せてくる。スペンサー・シリーズを読む行為は、安心感を求めなじみの酒場に通うことと似ているというのは、言い得て妙だと感心した。スペンサー・シリーズは40年以上続いたが、最期の方はマンネリ感もあり、話のテンポも遅くなった印象だが、それでもつい新刊を手に取ってしまうのは、マンネリ感を求めてなじみの酒場に行くことに類する。チャンドラーもハメットも好きなのだけど、どちらかというとそれらは様式美を随所にあしらった格式高いバーのような一面があり、余所行きの感じだ。

パーカー作品を読むのは自分がモッキリセンターや金富士に惹かれていくのと同じことだったのだ。

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