備忘録 KEF Q350 半年経過

KEF Q350を購入後半年経った。エイジングもほどよく進み、音がこなれてきたこともあり、このスピーカーの特徴がよく出る音源を聴いてみた。というのは口実で、なぜかKEF Q350の検索スタッツがあまりにも多いので話題提供することにしてみた、というのが本当のところ。

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KEF Q350のレビューを見ると①中高音がよく出る②低音が弱い③バランス感や音の定位が優れている、が指摘されていることが多い。これらについては全部当たっている。中音の表現の美しさはお値段以上で、女性ボーカルやテナーサックスを聴くときはこのスピーカーを買ってよかったと思える瞬間だ。小音量時の低音は大口径のウーファーを備えたスピーカーに比べると当然弱いけれど、マンション暮らしの当方には低音が響くとまずいのでアンプのBassを強調することなく、ソースダイレクトで十分快適に聴けている。但し、ひとたびボリュームのつまみを上げると、本機は牙をむきぬけのいい低音を充分愉しむことができる。音の定位に関しては、流体力学を応用したCFDポートを採用したUni-Qドライバーを搭載することにより異次元の優位性を達成している(と、取説に書いてある)。

自分はCD音源を聴く機会が多い。雑食なのでジャンルを問わず広く聴いているけれど、「KEF Q350感が出ている!」と感じた相性の良さそうな盤を紹介したい。

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このスピーカーは透明感を表現するのが得意と感じ、チックコリアのLight as feather (1972)を聴いてみた。カモメに続くRTF2作目。フローラ・プリムのボーカル曲がかもめよりもポップな印象を醸している。チックのエレピの音も軽やかで、録音もクリア。ジョー・ファレルの高めのサックスの音とスタンリー・クラークのベースの唸りがが気持ちよく鳴る。

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単純に目茶目茶録音が良い盤も素直に再生される。スティーリー・ダン系列の作品群では録音が一番良い(と思う)Donald FagenのMorph the Cat(2006)。次作のSunken Condoよりも高音質に感じるのは自分だけだろうか。Nightfly信奉者の評判はいまいちだけど、個人的にはフェイゲンのソロの中でも好きなほう。特にバンマスのJon Heringtonのテレキャスの音がきれい。

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キリンジで一番好きな歌は「耳をうずめて」だ。47’45″(1999年)に収録されている。堀込兄の曲がいい、堀込弟の声がいい、冨田恵一のアレンジがいいと三方よし。冨田恵一は無類のスティーリーダン・フリークで、日本のドナルド・フェイゲンとして素晴しいエンジニアリング・ワークを見せている。

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KEF Q350を語るうえで外せないのが女性ボーカル。手垢がついた人気盤という感じも否めないけれど、Madeleine Peyrouxの2作目Caress Love(2004年)はやはり良い。若いのに人生の酸いも甘いも噛み分けた感のあるハスキーボイスがレナード・コーエンやディランのカバーを歌う。雰囲気的にビリー・ホリデイの気怠さが漂い、厭世観を表現。隙間の多いミニマルな録音にボーカルが映える。録音そのものも秀逸。

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ボーカルものの古い録音を聴いてみる。Blossom Dearie(1956)のセルフタイトルアルバム。名刺代わりの舌ったらずのフレンチなまりのボーカルも良いが、自身で弾くピアノも巧い。Ray Brownのベース、Joe Jones のドラム、そしてワサビのように効いているのがHerb Ellisのギター。それぞれの楽器の位置がわかるような録音になっており、空間を感じることができる。

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もう一枚女性ボーカルを。Tracy ThornのDistant Shore(1982)。ギターとボーカルのみのシンプルな構成でコール・ポーターやレナード・コーエンの曲を歌う。5万円くらいの費用で録音したとか。そのチープでルースな感じがよく出ているアルバムで、トレーシー・ソーンの若干かすれた感じの声がEBTG前夜的な雰囲気を出している。

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男性ボーカルも聴いてみる。Eddie JeffersonのLetter from Home(1962)。パーカーのBop曲をボーカルで見事に歌う。名人芸の域。Body and Soulやチュニジアの夜などのスタンダードも弾んで歌う。A列車で行こうはJohnny Griffinのサックスも含め本作の聴きどころ。Q350は女性ボーカルだけではなく、線が太い男性ボーカルも好物なのだ。

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James TaylorのBefore this world(2015)JTの最新盤で当然録音がいい。レッドソックス賛歌Angel of Fenleyなんかは少年の心を持つ67歳の初老の本領発揮。本作のドラムはSteve Gaddが叩いており、抜けがいい音がアルバム全体のアクセントになっている印象。Sweet Baby Jamesのころと比べると、録音が格段にクリアなのでブラシワーク一つとっても、臨場感が素晴らしい。

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最後にZappのファースト(1980)を聴いた。一曲目、名曲More bounce to ounceからロジャー・トラウトマンのトーキングボックスが唸りまくる。本作のように音密度が高い音楽でも、なるべく楽器ごとに鳴らし分けようというスピーカの意思が感じられる。これはDEC-1000の効果のほうがより大きいかもしれないが、ごった煮感が少なく、楽器のなり分けが良い。たまに聴こえてくるブーツィーのギター(ベースではないのだ)も粒立ちがいい音を聞かせている。

中間レビューの体でジャンル違いの盤を聴いてきたが、Q350の音は、例えばDALIやB&WやJBLなんかと比べるとかなりニュートラルな音に聞こえると思う。ほかのスピーカーは個性的な味付けがされているほうが、メーカーの特徴が出ていいという考えのもとデフォルトで低音域を増幅させたりピーキーな高音を聞かせたりと工夫するが、Q350 は極めてフラットな音が鳴る。人工的な味付けに慣れてる向きには物足りなさを感じるかもしれないが、音源本来の音を忠実に聞きたい向きには合っているであろう。端的に、長く聞いていても疲れないし、盤を選ばない良さがあると思う。

またそのうちロックとブルースのジャンルでレビューしたい。

 

 

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