仙台に6日間逗留。到着した7月21日(日)の37度の暑さには参ってしまい速攻帰りたくなったが月曜日からは若干暑さも収まった。松島、仙台城跡、定規山西方寺、震災の爪痕残る荒浜小学校に行く機会もあり、充実した滞在であった。仕事が夕方に終わると飲みに行ったり、中古CD物色したり、落語聞きに行ったりし仙台の街を楽しんだ。備忘録として記録ておく。

仙台呑み。2日連続で宿からほど近い老舗の酒場に行った。太田和彦の日本百名居酒屋で紹介されていた「源氏」だ。文化横丁の一角にあり、細路地をぬけたどん詰まりに店を構えている。暖簾をくぐると和服姿の女将がコの字カウンターの中から迎えてくれた。飲み物は5種のみで浦霞の純米、高清水の純米しぼりたて、辛口、濁り酒、ビールから選ぶ。それぞれ1,000円ほどで注文ごとにお通しがつく、札幌の金富士方式だ。お酒はもっきりで供され、コップはおそらく京成立石の打ち多”とおなじ厚手のガラスのものだ。これで飲むとどんな酒でも1.5倍くらいうまく感じるから不思議。1杯目はその日の一品と香の物、2杯目には茗荷、生姜、ネギ、鰹節がのっかった木綿豆腐1/3丁、3杯目には御造り、4杯目にはおでん盛り合わせか味噌汁の選択、5杯目からはお通しなし。お通しのクオリティが極めて高く、多くの客はお通しのみで飲んでいる感じだ。初日は一杯目のお通しに塩ゆでしたホヤが出てきたが、すでにビールを頼んでおりあとの祭り。わかっていれば一杯目は高清水の辛口にしていた。ビールではホヤの濃厚な風味を流すことができないのだ。お造りは日ごとの仕入れ次第のようで、初日はカツオ、さわら、ブリ、マグロ、2日目はカツオ、タコ、貝、鯛が供された。いずれも新鮮できちんと包丁が入れられている。両日とも若干年齢高目な地元中心の客層で満席だったが、自分のような余所者も受け容れてくれる懐の広さを感じる、心持がよい酒場だった。
文化横丁からほど近くに壱弐参(いろは)横丁がある。戦後の闇市から派生した新旧飲み屋が立ち並ぶにぎやかな横丁で、古くからやっている焼き鳥やの鳥よしに入った。カウンター8席のこじんまりした店で抜群に串ものが美味しかった。注文を受けてから串打ちを始めるとのことでなかなか焼き物が出てこなく、文庫本を読み始めるも常連の会話が面白くそちらに気がそがれてしまった。「おれ鈴木京香と同期だったんだぞ。昔からめんごがったわぁ」と50歳くらいのおじさんが自慢すると「俺なんか福原愛ちゃんの近所だったんだぞ。白百合の幼稚舎いっでたんだっけかな。実はお嬢様なんだど」ともう少し若いのが応酬。「大友康平は俺の大学の後輩だがや」とマスターものっかるなど、仙台有名人との知己自慢合戦が面白く、滞在した1時間ほど暇しなかった。〆に文化横丁の餃子屋に向かったが満員、しょうがないので宿泊先の近くの老舗ラーメン屋末広亭でラーメン食べて宿に戻った。
中古CDも物色。掘り出し物はPinetop PerkinsのAfter Hours。70年代のMuddy Waters Bandの鍵盤を担当し、Blues Brothersの映画ではマックスウェル・ストリートでBoom Boomを演るJohn Lee Hookerの後ろでピアノを弾いていた初老の黒人。88年に75歳にしてソロデビュー作。これが素晴らしいアルバムで、暑苦しいブルースピアノが聴ける。また、Red Hot and Blueなるコンピレーションも見つけた。このアルバムはStaxレーベルへのトリビュートアルバムの体でIsaac Hayes, Chuck Jackson, B.B. King. Sam Moore, Billy Preston, Carla Thomasなどが”Knock on Wood”、”Hold on, I’m Coming”、”Rescue Me”など往年の名曲を再演。Memphis Hornsも入り、スタックスサウンドに目がない私としては嬉しい掘り出し物。そのほかMaceo Parkerソロ初期の名作Sax Maschine含むEP盤、MotownからはJr. Walker & the all starsのShotgun、Paul DavisのCool Night、Stephen BishopのCarelessなどAOR名盤2作など楽しい買い物をした。東京の中古屋だとすぐに売れてしまいそうなタマも地方では残ってたりするので、地方での中古盤漁りはやめられない。結局10枚ほど仕入れた。

仙台のススキノ、国分町はずれにある魅知国定席 花座で落語も聞いた。狭い寄席会場で、バカ高い高座から前座・春風亭べん橋の「ちはやふる」、地元マジシャン・オーイズミの手品、トリの笑福亭希光が「やかんなめ」をやった。希光のやかんなめは大笑いで、楽しいひと時を過ごした。半分入ったお客さんのほとんどがおばちゃん。仙台のおばちゃんはよく笑うことを発見。気をよくして仙台駅の北辰寿司に向かったのであった。

仕事関係で役所からおもてなしを受けありついた牛たんコースは当然美味だったのだが、今回の滞在で一番おいしかったのは定規山西方寺の定規揚げだった。小腹が減っていたことも手伝い、揚げたての分厚い三角厚揚げに醤油と一味唐辛子をかけて、ふぅふぅやりながらかぶりついたが、本当に美味しかった。日本酒でもあれば1枚で1時間は飲めたであろう。
来週から始まる最大のイベント七夕まつり直前の仙台は暑く、きれいで、美味しく、いつもと変わらず良い街であった。
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