8/5(日)19:00~19:55に村上春樹のラジオを聴いた。「僕が一番面白かったのは1984年だったか、アメリカに行って誰にインタビューしたいかと聞かれて、ジョン・アーヴィングがいいといったら、朝セントラルパークをジョギングしているので、走りながらでよければということで、並んで走りながらインタビューしました。あれは面白かったな」など興味深い話も出てきて、楽しめた。選曲はブライアン・ウィルソンとビーチボーイズ以外は何となく予想外。不意を突かれたのが冒頭のドナルド・フェイゲンのMADISON TIME。82年発表の名作NIGHTFLY以降沈黙していたフェイゲンがようやく届けてくれたのがニューヨークレビューという作品。発売当初はスティーリー・ダンのファンからも駄作、期待外れとこきおろされた代物で、番組1曲目に当アルバムから選曲するとは意外や意外。放送をきっかけに聴きなおしてみたけれど、フィービー・スノウ、マイケル・マクドナルド、そしてチャールズ・ブラウン!も出ていてフェイゲンの作品として捉えるとちょっと違うものの、アルバム自体は結構いける。村上春樹は2003年の録音と言っていたけれど、音源の録音は1990年かと思われ。

あと面白かったのは「ベン・シドランとはコペンハーゲンのジャズクラブで会って仲良くなったんですよ。カフェ・モンマルトルという古いジャズクラブがあって、ベン・シドランがライブに出ているというので聴きに行ったんだけど、向こうも僕のことをたまたま知っていて、休憩時間に二人でずっと話してました。けっこう趣味が合うんです。好きなピアニストがモーズ・アリソンだったり、セロニアス・モンクのことを話したり。」というくだり。モーゼ・アリスンは白いモンクと言われることもあるけれど、ジャズファンからはそのたとえが「崇高なるモンクに失礼」と嫌われている。ベン・シドランはモーゼ・アリスンを至る所でカバーしているので当然好きなのだろうけど、村上春樹も好きなのね。一方春樹はモンクの音楽には宿命的なまでに惹かれたと言及しており、最近もセロニアス・モンクに関する文章を抜き出して編集した「セロニアス・モンクのいた風景」なる本を出している(未読)。また、「ポートレイト・イン・ジャズ」では「モンクの音楽は頑固で優しく、知的に偏屈で、理由はよくわからないけれど、出てくるものはみんなすごく正しかった。その音楽は僕らのある部分を非常に強く説得した。彼の音楽は例えて言うなら、どこかから予告もなく現れて、何かすごいものをテーブルの上にひょいと置いて、そのまま何も言わずに消えてしまう「謎の男」みたいだった。モンクを主体的に体験することは、一つのミステリーを受け入れることだった。マイルズもコルトレーンも確かに天才的なミュージシャンだ。でも彼らが本当の意味で「謎の男」であったことは一度もなかった。」と記している。

モンクのピアノもモーゼ・アリソンのピアノも初めて聴くと「変で調子が外れている」と思ってしまうが、それがなければ他と判別がつかないただのピアニストになってしまう。ラジオ番組を聴いてから、その番組で語られたアーチストの作品を改めて聴きなおすということはよくやるが、今回もご多分に漏れず。モンクはBrilliant Cornersが好きだが、村上春樹が引き合いに出すモンク的な演奏を堪能できるThelonious Himselfというピアノソロを聴いた。やはり、天才を感じる。また、モーゼ・アリソンもAtlanticから出している歌物が有名だけど、放送後に選んだのはPrestigeからリリースされたBack Country Suite。Young Man Bluesは何度聴いても素晴らしい。ついでにVan Morrisonの企画ものでベン・シドラン、ジョージ・フェイムと組み、アリソン本人も迎えて作成されたモーセ・アリソントリビュート盤。出たころは聴きまくった私的名盤。その流れでベン・シドランの比較的新しい2012年のDon’t Cry For No Hipster。アコースティック・ピアノ、ウーリツァー、ハモンド・オルガンの音が、ドナルド・フェイゲン的に聴こえることもあり、なかなかの好盤。

村上春樹の素の声を聞いたのは始めてのような気がする。ディランも晩年自分が好きな音楽を紹介するラジオ番組を数年やっていたし、村上春樹もレギュラー番組やればいいのに。
因みに熱心なファンがプレイリストを作っていましたので拝借。
Madison Time / Donald Fagen
ハイ・ホー、笛をふいて働こう、ヨー・ホー / Brian Wilson
Surfin’ USA / The Beachboys
D.B.Blues / King Pleasure
Sky Pilot / Eric Burdon & The Animals
Thelonious / Thelonious Monk
My Way / Aretha Franklin
Suburbia / Pet Shop Boys
September / Earth &Wind & Fire
What A Wonderful World – Joey Ramone
Between The Devil And The Deep Blue Sea / George Harrison
Knockin On Heavens Door / Ben Sidran
Blue Monk / Thelonious Monk
Love Train / Daryl Hall & John Oates
Light My Fire / Helmut Zacharias
北海道在住でお聴き逃しの方は、明日までRADIKOタイムフリーで聴けます!
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