KEF Q350を導入して1年が経過した。出張で家を空けるとき以外は毎日電源を入れ、音楽を聴いている。Q350のレビューは購入直後、半年後と2度エントリーを書いたが、今回が最後になる。手短に。
すでに過去2回で触れたが、本製品を特徴づける▽味付けの薄いナチュラルな音▽特に中高音域がきれいに表現される▽音量を上げると(マンション暮らしには十分な)低音域が得られる、特性についての感想は変わらない。ほぼ毎日聴いているので導入直後からエージングによってどれだけ 変化があったかはよくわからないが、感覚的には暖かみを増したような気がする。ただし、それがDAC導入の影響なのかエージングによって得られた効果なのかは判別できない。

逆にネガティブな特性として▽フラットすぎて特徴のない音▽低音が弱い▽音量が小さいと鳴りが悪い、などのレビューを見かけるが、やはりどれも当たっていると言えるだろう。また、ブックシェルフというには大きすぎるという意見もその通りである。
自分の場合は似た価格帯のB&WやタンノイやDALIと聞き比べそのフラットな特性に魅かれたので最初の指摘は問題としない。低音やローボリューム時の対策は単に音量を上げればいいのだけれど、早朝や夜遅くだとそうもいかない。そこで苦肉の策として、高校生の時に親に買ってもらったコンポ、KENWOOD ROXY G-3の口径の大きなスピーカーをアンプにつなぎ、音量を上げられないときにA+Bの体制(つまり2ペア)で聴くようにしたところ、低い音量でも低中高すべての音がバランス悪くなく聞こえるようになった。A=KEFだけだと物足りない低音もB=KENWOODのウーファーが低音を補ってくれ、良い塩梅で聴こえてくる。少なくともアンプのBASSを増幅するよりもふくよかに聴こえて、バランスも格段に良い。BのみだとKEFで聴けるような粒立ち良い中高音は鳴らないのでB単体で使用する機会は無い。また、A+B状態で昼間に聴くような普通の音量にすると、低音が響きすぎてマンションの上下階に迷惑が掛かってしまう。従って昼時に音量つまみを上げる際はQ350のみで聴く。マランツのPM6006を使用しているので、インピーダンスの問題はあるものの、既存のお古のスピーカーを繋げるだけでここまで音質が改善されると、なるべくお金をかけないでオーディをを愉しむのがモットーの自分としては素直にうれしい。

余談だが、昨日会社帰りにタンノイのウエストミンスターにマッキントッシュのパワーアンプがつながれているバーのカウンターで酒を飲んだ。スピーカー両方で350万、パワーアンプ2台、コントロールアンプ、CDを合わせると500万以上のオーディオ装置は見るにも美しく、それらを目の前に眺めながら飲むスコッチは旨い。鳴っていたのがエディ・ヒギンズのトリオものやスティーブ・キューンの亡き王女のためのパバーヌと、さもありなんというチョイス(ジャズバーではなくラウンジのような場所ということを考慮すると)であったがお店の雰囲気にはすこぶる合致している。音源がせめてCDであってほしかったが、どういうわけかMP3プレーヤーだったので音質が貧弱だったことが何とももったいない。音源のせいかタンノイはおとがくぐもっており、低音も薄っぺらかった。音の好みから言うと25分の1くらいの予算しか投じていないKEF Q350を配した我が超エントリーセットのほうが自分に合っている感じがした。 排気量の大きい車の惰性運転よりも小排気量の車がパワーレンジに入っている状態のほうが好みということだろうか。音のよいCDやアナログレコードを鳴らすと、ウェストミンスター様の印象も全く違ったものになると思うが、昨日は日がよくなかったかな。家に戻ってQ350 から鳴るケニー・バロン=マイナー・ブルースのピアノが生き生きと聴こえたこと!

最後にこの1年で聴いた一番良かった音源。クリス・アンダーソンとチャーリー・ヘイデンのNone but the lonely hearts、そのハイレゾ音源だ。CDを所有していたが、HDトラックからハイレゾ盤を購入した。レーベルは高音質で有名な英国NAIM。本作CDも良音盤だったがハイレゾ音源は更に空間の広がりを感じ、アンダーソンの息遣いが伝わってくるリアリティーが素晴らしい。その中の一曲を選ぶのならば、本作のBody and Soulは数ある 演奏の中でも最もソウルフルな演奏ではないだろうか。NAIMからもう一枚の愛聴盤、John TaylorとのNightfallもハイレゾを購入したが、音の広がりは前者の方が優れている。

これから戸建てに引っ越すことがあるかどうかはわからないが、少なくともそれまではKEF Q350との付き合いが続く予感がしている。
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