札幌ファクトリーのユナイテッドシネマに、映画カーマイン・ストリート・ギターを見に行った。

映画サイトの紹介文を要約すると『グリニッジ・ヴィレッジにある「カーマイン・ストリート・ギター」。ギター職人のリック・ケリーはニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作る。廃材はチェルシー・ホテル、バー・マクソリーズなど、マンハッタンのサブカル的なランドマークのものも扱われ、中には150年前の木材もある。顧客の中には在りし日のルー・リード、パティ・スミスなどのビッグネームから、ビル・フリーゼル、マーク・リボー、チャーリー・セクストン、ウィルコのジェフ・トゥィーディーなどなど。工事の知らせを聞きつけるたびリックは現場からヴィンテージ廃材を持ち帰り、傷も染みもそのままにギターへ形を変えてゆく 」という感じだ。

Lou Reed
カーマイン・ストリート・ギターがある、グリニッジ・ビレッジは自分が20歳から3年間住んでいたレキシントン通り23丁目から歩いて20分くらいのところ。貧乏学生だった当時は、自転車で23丁目からビレッジを抜けてチャイナタウンの安飯屋までよく行ってた。ギターショップがビレッジに移転した1990年は、自分がマンハッタンに住み始めた年だ。30年も前のことで、街も様変わりしていると思っていたが、映画で映しだされる風景はほとんど変わっておらず、懐かしさがこみ上げてきた。ジム・ジャームッシュが映画に登場するが、自分もブロードウェイ・4丁目付近にあった(今もあるのかな)タワレコの前で彼を見かけたことがある。

Walter Becker
劇中に出てくるギタリストが奏でる音色が好きだ。ビル・フリーゼルの温かみがある音、マーク・リボーの狂気を帯びた音(というか演奏)、ディランのバックを務める時のチャーリー・セクストンの控えめで技巧的なバッキングの音、 ジェフ・トゥイーディー( ウィルコ)の惚けた、しかしながら滋味深いソロ。自分が聴いた演奏が、カーマイン製のギターとは限らないが、自分が好きなギタリストの支持を これだけ 集めるギターはさぞかし、魅力的な音を奏でるのだろう。実際、劇中でビル・フリーゼルがサーファー・ガールを単音で爪弾く件があるが、何ともふくよかな音色で、晩夏を愉しむサーファーの女の子が目に浮かぶような演奏だった。

Charlie Sexton(Left)AKAチャリ坊
あと、ザンパラのエヴァ役、エスター・ヴァリントが店に現れ、ギターフレーズを弾くシーンがある。 往年のザンパラ・ファンとして、かなり興奮してしまった。なんせ、彼女をスクリーンで見るのは1991年にアンジェリカ・フィルム・センターでザンパラのリランを見たとき以来だったから。
好きなアーティストに目が行ってしまうが、映画のメッセージは「堅気のギター職人が昔ながらの製法で、大都市の中で家内制手工業を貫く。それはあたかも大量生産大量消費社会に対するアンチテーゼあり、手垢が付いたグローバリズムに対し反旗を翻す」というところだろう。 チャーリー・セクストンとの会話の中で、リック・ケリーが「私は資産家じゃないので、ここでずっとギター作りを生業に、根を張り続けたいだけさ」とつぶやく場面があり、ずっと脇役のようなたたずまいで劇中に出てきていたケリーが、物語の主人公だということに気づかされる。

エンドクレジットに「ジョナサン・デミに捧ぐ」とあった。本作を監督したロン・マンはカナダ人。晩年、立て続けにニール・ヤング(カナダ人)のドキュメンタリーを撮ったデミに対するカナダ人としてのオマージュではないか、と勝手に想像力を働かせてしまった。
洋楽好き、ギターマニアにはおすすめの映画です。

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