
ブルーノート東京でAzymuth=アジムスのライブを見た。
Azymuthは1960年代から活動している息の長いブラジルのフュージョンバンド。基本はジョゼ・ホベルト・ベルトラミ(故人、José Roberto Bertrami、キーボード)、アレッサンドロ・マレイロス(Alex Malheiros、ベース)、イヴァン・コンチ(Ivan Conti、ドラム)の3人編成。ベルトラミ逝去後 (2012年没) に制作された最新作FENIXではブルーイ(インコグニート)の息子ダニエル・マウニック、そしてミルトン・ナシメントやジルベルト・ジルのバンドに参加するピアニスト、キコ・コンティネンティーノが迎えられ、今回のライブもキコが帯同した。

このバンドを知らなくても、NHK FMクロスオーバーイレブンのオープニング曲Fly Over the Horizonを耳にしたことがあるという人は多いかもしれない。ホセ・ベルトラミのフェンダー・ローズ(鍵盤)の音が印象的な名曲だ。
クロスオーバーイレブンのテーマ曲の印象があまりにも強烈だけれど、Azymuthの作品はほかにも佳曲揃いだ。テクニック非重視、速弾き禁止、複雑なこと禁止の隙間だらけの世界だが、そこにはまると余りにも居心地がよく、CHILLI’Nな状態が心地よくなってしまう。サウダージの塊のようなLast Summer in Rio(FLAME 収録)、今回のライブのオープニングを飾ったClub Morrocco(Cascades収録)、イヴァンのドラミング冴えるボーコーダー使用曲Right On(FLAME収録)、クラブのフロアを盛り上げるJazz Carnival(Fly over horizon収録)など魅力的な曲が多い。
ベルトラミのフェンダー・ローズについて語られる機会が多いこのバンドだが、屋台骨イヴァンのドラム、マレイロスのベースが本当にかっこいい。超絶技巧派の二人だが、音に隙間を持たせ、わざといなたさを演出しているようにも聞こえるその演奏は何にも似ていない唯一無二のもの。極端な話、ベルトラミ不在のアジムスは成り立っているが、イヴァンとマレイロ不在のアジムスはアジムスではなくなってしまう。今回のライブでもイヴァンの端正なドラミングとマレイロの極太スラップがさく裂し、思わず悶絶してしまった。前作Auroraと最新作Fenixはフロアをかなり意識した音作りになっているが、随所に聴くことができる往年のAzymuth節は健在。


今回のライブはマルコス・ヴァーリとの共演だった。会場の半分くらいはマルコス目当てだったかもしれない。マルコス・ヴァーリが登場するや、さすがボサノバ・ムーブメント第2の波の中心人物だけあって、歓喜の渦。Azymuthのバンド名由来にもなったヴァーリのAzymuth、Jazz Carnivalとアッパー曲を連発、会場を大いに盛り上げた。マルコスの代表曲Summer SambaとFly Over the Horizonを合体させたナンバーが披露されたが、これだけはそれぞれ単体で聴きたかったというのが本音。総じて、イヴァンとマレイロを間近に見ることができたこと、キコとマルコスのダブル・フェンダーローズを聴けたこと、Last Summer in Rioを聴けたことなど大いに満足のゆく100分間だった。翌日はパリ公演とのことで、そのまま成田に向かった。

客層は往年のファン4割、クラブ系4割、ブラジル人・日系ブラジル人・その他外国人2割というところか。以下はブルーノート東京発表の25日のセトリ。自分が見たのは27日ラストだが、セットはほとんど同じ。
1. CLUB MOROCCO
2. VILLA MARIANA
3. MELÔ DA CUICA
4. LAST SUMMER IN RIO
5. AZYMUTH
6. VÔO SOBRE O HORIZONTE ~ SAMBA DE VERÃO
7. ALMA
8. OLHA QUEM TÁ CHEGANDO
9. ESTRELAR
10. PARABÉNS
11. JAZZ CARNIVAL ~ FREIO AERODINÂMICO
EC1. BATUCADA SURGIU
EC2. TAMBORIM, CUÍCA, GANZÁ, BERIMBAU

表参道駅からブルーノートまで、青山南小学校を横目に中通りを歩いたが、路面標示がLight as a featherのカバーのデザインのように(笑)。この日のためにというわけではなさそうだけれど、路面標示デザイン担当がAzymuth好きだったのかもしれない。


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