備忘録 マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)逝去

また一人レジェンドが亡くなった。

タイナーの演奏に初めて触れたのは、御多分にもれずコルトレーンのインパルス盤。コルトレーンの前には決して出しゃばることの無い演奏は、コルトレーンの演奏を充分引き立ててはいたものの、バイプレーヤーとして以上の印象は薄かった。ジャズを聴き始めた18,9歳頃のはメインディッシュを聴くだけで目いっぱいで、サイドディッシュを聴き分けるだけの耳を持ち合わせていなかったのだろう。後になって気づくのだが、コルトレーン、エルビン・ジョーンズ、タイナーのコンビネーションはコルトレーンの演奏の熱量に比例して各自がボルテージを上げるが、ジャズメッセンジャーズのように、ピアノやドラムが各々メインを張る演奏は残していない。アセンションのようなアルバムでは、コルトレーンの演奏に引っ張られて、ジョーンズにしてもタイナーにしても超絶演奏を繰り広げるが、それはすべてあくまで予定調和的で、本来的な意味での個々のインプロビゼーションに昇華してはいないように聴こえる。

大人になりタイナーのリーダー作を聴くようになり、その印象が変わった。特に、マイルストーン時代のタイナーは鬱陶しいくらいのエネルギーを発している。評価の高いSAHARAやATLANTISなどは2~3年に一回くらいしか聴く気にならなかった。聴くのに体力を要するアルバムで、よほど気合を入れなければ聴き通せないため、食指が伸びる機会がなかなかないのが理由だ。その代わり、それらのアルバムはタイナーの能動的なインプロビゼーションで溢れ、聴くものを否応なしに引きつける力がある。だからアルバムを通して聴くと、疲れる。

今回タイナーの訃報に触れ、それらの盤を引っ張り出して聴いてみたが、印象は変わらない。ただ、70年代のタイナーはコルトレーンの残したレガシーを超えようと、真剣に音楽に向き合っていたのだろうということが理解できたような気がする。天才を前にした秀才の努力の足跡が、すがすがしく記録されている。

好きな演奏を挙げてみる。まずはブルーノートに残したReal Mccoyの1曲目Passion Dance。ジョーヘンがよく歌っている。やはり、メインを立てるのが上手。

マイルストーン時代の暑苦しいライブアルバムAtlantisから清涼剤のようなスタンダード  In A Sentimental Mood。テクニシャンぶりを発揮。

そして後年マイケル・ブレッカーとの競演作を残すが、その中からメセニーの楽曲。Song for Bilbao。ブレッカーがタイナーを選んだのは、間違いなくコルトレーンを意識してだろう。

でもやっぱり最後はコルトレーンとの作品。生まれて初めてタイナーの演奏に触れたのが、おそらくBalladのSay itで、それも最高なのだけれど、今回は同じ時期にジョニー・ハートマンと演っている歌物を。グッチ祐三が以前大絶賛していました。They say it’s wonderful。

やはり、コルトレーンの女房役が一番か、と思わせる名演奏。タイナーの優しさが染みる。

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