備忘録「真夏の夜のジャズ」

今週のサンソンは達郎&まりやの夫婦放談。妹背牛から札幌に戻る車の中で、楽しく聴いた。内容は、先日亡くなった弘田三枝子の追悼の体で、「かっこいいツイスト」、「駅」のカバーなどが選曲されていた。びっくりするほどよかったのが、自作のソウルバラード「Sweet Love」。初めて聴いたけれど「これ絶対マリーナ・ショウを意識してんな」という作りで、直居隆雄のギターなんぞ、まんまDavid.T.Walker、弘田のボーカルもショウに寄っているような印象。Who is this bitches anyway?が出たのが75年、本作が76年。さもあらんというところか。

65年に弘田はビリー・テイラー・トリオ(I Wish I Knew How It Would Feel To Be Freeは最高ですな)のゲスト・ヴォーカリストとしてニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演している。同年同じトリオで「ニューヨークのミコ」“Miko in New York”(日本コロムビア)を残すが、評判を呼び翌年の雑誌スイングジャーナルの人気投票「女性歌手」部門でトップに選ばれた。自分が物心着いた頃にはダイエット本のおばちゃんになり果ててしまっていたが、こんなにすごい人だったとは。

前置きが長くなったが、今週から1959年に制作された「真夏の夜のジャズ」が 4K版として劇場放映されている。弘田出演の6年前のニューポートだ。監督はファッション写真家のバート・スターン。1958年のロードアイランド州、ニューポートで開催された第5回ニューポート・ジャス・フェスティヴァルの模様を記録したドキュメンタリー映画で、音楽に合わせてダンスをする人や、アイスクリームを食べている人など、映像の切り取り方に監督のセンスが冴えわたっている佳作。 演奏が素晴らしいのは言うまでもなく、ニューポートの街の様子、海の景色、会場を埋める観客の粋なファッションなど、ベトナム戦争で荒む前のアメリカを映像に捉えていて、見ていて楽しい。全体的にお上品な作品である。

出演者は
ジミー・ジェフリー・スリー
セロニアス・モンク
ソニー・スティット
アニータ・オデイ
ジョージ・シアリング
ダイナ・ワシントン
ジェリー・マリガン
ビッグ・メイベル
チャック・ベリー
チコ・ハミルトン
ルイ・アームストロング・オールスターズ
マヘリア・ジャクソン
など。

個人的にはBlue Monkを弾くモンクとBig Maybell のI Ain’t Mad at Youが良かった。動くBig Maybell の映像はとても珍しい。マリガンのバリトンもでかさがわかってよかった。

本作で強烈に色を添えているのがチャック・ベリーだ。Sweet Little Sixteen演奏最中にJazzのカテゴリーに宣戦布告するような形で、共演者の戸惑いをよそに、お得意のダック・ウォークを始めてしまう。作品中、唯一下品(というか非JAZZ的な)なパフォーマンスで、眉をしかめた客もいるんだろうなぁと想像してしまうが、これがかっこいいのだ。10代の頃にこの映像を見たキース・リチャードはのちに「『真夏の夜のジャズ』でチャックを見たとき、ジャズ・ミュージシャンに囲まれた状態で常識に囚われないプレイをする彼の姿が、頭のなかに刻み込まれた。チャックはジャズあがりのバンドプレイヤーの上から目線的な態度に挑むプレイをした。それこそがロックンロールの態度であり、ロックンロールの根性だ。俺は白人だけど、チャックみたいになりたいと思ったよ」と語っている。

見る人によって、感じ方はいろいろあるけれど、偉大な映画である。僕が持っているのはリマスター前のDVDだけど、機会があれば4K版も見てみたいものである。(9月18日からサツゲキでやる予定。キノではないのね)

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