備忘録 ウグイを喰らう

昨日、太平洋側の漁港でウグイが釣れた。勿論外道で、大チカ狙いで出していたサビキ仕掛けにかかってきたのだ。

ウグイくらい釣り人に疎まれる魚も珍しい。

海釣りでウグイ(アカハラ)がかかると、海に戻されずその辺に放置され、気づけばカモメに持っていかれる。サビキ釣りで仕掛けをぐちゃぐちゃにされた腹いせに、港の岸壁にたたきつけられる光景も目にする。ヤマメ狙いの川釣りでウグイが釣れると、あからさまに残念がられる。氷上のワカサギ釣りでもウグイがかかることがあるが、テント外に放られキツネが持っていく。自分がウグイだとしたら、或いは自分の家族がウグイと考えたら、やりきれない。そういう自分もウグイがかかると迷惑に感じ、海に返さず岸壁に放るのである。

2週間前、同じ港で大チカ釣りをしていたときも、ウグイの大群に見舞われた。サビキ、港内に出した投げ竿共に、ウグイ祭りであった。その時に釣りの見物に来ていた老人が話しかけてきてこんなことを言っていた。

「もう少し水温下がれば、ウグイを刺身にして食うと旨いんだよね」

その時は大チカ大漁だったので、ウグイを持ち帰る発想などまるでなかったが昨日は強風でほとんど釣りにならず、しかも、サビキに来てくれたのは30センチ位のウグイ一匹のみ。おじいさんの言葉を思い出し、持ち帰ることにした。

ウグイの鱗は大きくて固い。頭を取って包丁で鱗をそぎ落とす。この時点で彼女(子持ちだった)は絶命しておらず、キューという断末魔を発す。合掌。次に3枚に開く。小骨が多いことで知られるウグイだが、背骨に沿って包丁を入れると、小骨をぷつぷつと断ち切りながら簡単にさばくことができる。3枚に下ろした後、腹骨部分を削ぎ、それから皮を引く。ウグイの皮は厚く、強く、滑りやすい。下にキッチンペーパーを敷き、尾の方から包丁を入れ、皮を引いた。出来上がった柵は、昔、青森で食べた鯉のあらいに似ている。

ここで一度、氷で柵を締める。今回は生きたウグイをさばいたので、身が固くしまっているが、死後しばらくたつとコイ科の魚は身が柔らかくなり、氷で締めることで弾力を再生させることができることから、あらいの食べ方が主流なのだろう。氷で締めたウグイの柵をキッチンペーパーで水気を拭きとり、冷蔵庫でさらに冷やす。

日本酒を用意し、皿に盛り付けた(左)。今回は皿の隣にえんがわ付きのマツカワガレイが鎮座していて、少々分が悪いが、その味はいかに。

「なまらうまい・・・・・・」

歯ごたえがあり、淡泊ながら微かに甘みを感じる。青魚ほど脂やさかなの香りを感じさせないが、十分に旨みがある。先ほどまで生きていた魚なので、新鮮この上ない。ウグイを食べた後に日本酒を口に含む。まるで割烹なり。

アイヌの人たちはウグイを食し、「赤く縞のついたウグイ」「小さく光るウグイ」「肉が白く太ったウグイ」など15ものウグイの呼び名を付け、リスペクトしていた。今回、初めてウグイを生で食べたが、アイヌの人たちがこの魚に愛着を感じ、美味しく食べていた気持ちがわかるような気がした。

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