備忘録 ワカサギ釣りあれこれ

茨戸川に今シーズン初のワカサギ釣りに行った。家から約40分も車を走らせると、結氷した川にテントを立て、ワカサギ釣りができるというのは、まことに贅沢な話である。

7時半に家を出て8時過ぎに現地到着。気温マイナス8度、晴れ、無風と最高のコンディション。荷物を運び出し、ポイントへ雪を漕ぎながら歩く。現場到着後、まず穴を掘ろうと二つ折りになったアイスドリルを出すと、接合部のねじが凍って固着しており、回らない。腰折れ状態では、支柱が斜めになり突端部の刃に圧力が伝わらず、妻に支柱を支えてもらいながらなんとか約20センチの氷を貫通。二つ目の穴を開け、テントを穴の上に設置。念のため、25センチある鋼鉄のペグを打ち、テントを固定した。外気はマイナス8度だが、日差しがあるのでテント内は暖かい。

9時少し前に竿を出し、釣りはじめると早速穂先が動く。ワカサギという魚は群れを成して行動するため、魚群の位置を確認するためにリールに水深を図るメーターがついているものがある。水深3メートルの底から上がってきたのは可愛いウグイ君。新年早々君が来るとは、とも思ったが昨年初めてウグイの刺身を食べたこともあり、なんとなく愛着がわく。すると、妻の竿に魚信が。立派なワカサギ君である。私の竿にもワカサギがかかり、それからはほぼ入れ食い状態である。7-8センチの小さいものから、16,7センチある大型のものも釣れる。朝飯用に昨日の豚汁をスープジャーに入れてきたが、釣るのに忙しく食べる暇がない。

12時15分まで釣り続け、最終的に2人で321尾釣った。竿頭は妻で約190尾、残りが私の釣果である。

ワカサギはすべて腹を出すことに決めている。山上湖で釣れた小さいワカサギは処理せずにそのまま揚げて食べることもあるが、下流域のワカサギはどんなに小さくてもすべて腹を出すことにしている。数釣りは楽しいのだが、帰ってからもうひと作業あるのがワカサギ釣りの落とし穴(穴釣りだけに、、、)で、慣れないと小さい魚に包丁を入れるのはえらく手間と時間がかかる作業となる。包丁を研ぎ、えらの部分から尻まで切れ目を入れ、えらと内臓を引き抜くのだが小さい魚体ほど捌くのに時間がかかる。捌いたワカサギは数回水洗いし、そのあと2回塩水で洗い、最後は酒を振ってなじませ、水分を切ってから揚げるようにしている。大きい個体は天ぷらに、小さいのはから揚げにして、残りはすべて南蛮漬けにした。

小浜市に住む義妹夫婦からいただいた早瀬浦の純米吟醸酒に揚げたてのワカサギを合わせてみる。これこれこれ!頭からかぶりつき、ふかふかの身が口の中でほどける。ワカサギ釣りがやめられないのは、これがあるから。ワカサギは昔からおいしい魚として扱われており、江戸時代に徳川家(11代家斉)に公儀御用魚として献上され、転じて公魚の漢字があてはめられたほどである。

北海道でいつごろから穴釣りが一般的に行われるようになったかはわからないが、山中湖あたりでは少なくとも1940年代以前から氷上の穴釣りをしていたという記録がある。釣り好きの医師兼作家、正木 不如丘(まさき ふじょきゅう)が「釣十二ケ月(1946年)」で山中湖のワカサギ釣りを紹介している。

「山中湖の釣れ初めは平野村寄りからであつて、氷はこの辺から張り初める。氷上釣の環境は清浄そのものであり、又当然海抜も高いので景色もいゝものであるが、山中湖は雄大純浄な富士を眺めながら釣るのであるから、蓋けだし釣趣満点である。氷上にポツ/\と簡単な釣小屋が立つて居るが、あの中で釣るのは寒さしのぎにはなるであらうが、折角の申分ない環境から隔離されるから、氷上釣の興趣の大半は失はれてしまふ。私はあの小屋は大嫌ひである。むしろ黎明と共に見え初める紫水晶の富士の峯が先づ紅をさして、その紅が一分々々と裾すそ迄流れて、スラツと純白な巨嶺となる迄の釣れ盛りの一時を、漁業を犠牲にしながら、独ひとり楽しみたいのである。」

正木はみぞれが降っても露天釣りを愉しむことを粋としているので、現代のテント釣りなどは無粋の極みに映るのだろうが、北海道では露天釣りは厳しいのだ。

自分が使っているアイスドリルは15年くらい前に入手したスウェーデン・エリクソン社の子会社MORA製である。北海道の穴釣りの愉しみは北方圏地域から輸入されたもので独自進化をたどってきているのではと想像が膨らむ。一昨年、北極圏のフィンランド・イナリ村を訪問した際には、白夜の夜に湖で穴釣りをしている人たちがいて、驚いた。聞いたところ、ノーザンパイクやトラウト類がターゲットとのことで、テント釣りはほとんどなく、露天釣りだという。自分が訪問したのは4月上旬、気温マイナス3度~0度程度だったので、テントなしでも気持ちよさげに釣りを楽しんでいた。穴釣り盛んなフィンランドをターゲットに、コールマンジャパンのアイスフィッシングシェルターなどを売り込めば、需要あるのではなどと考えながら、ぼんやり釣りしている人たちを眺めていた。

今シーズンは何回行けるだろうか。

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