備忘録 Great Nusrat Fateh Ali Khan

雑誌BRUTUSが『音楽と酒。』を特集していたので買って眺めていたら、「もしもピーター・バラカンがミュージック・バーを始めるとしたら。酒と相性のいいレコードを考えてみる」なる、中綴じページに遭遇。長年のPBリスナーにはお馴染みの楽曲が並び早速i-tunesでプレイリストを作って聴いている。最初のPenguin Café Orchestraは弧を突かれたが、Into the music以降は「そうなるよね」という感じ。改めて、PBは複雑でカッコよいベースライン推しなのだなぁと。


この特集がきっかけで、久々にDerek Trucks BandのSahib teri bandiを聴いた。Nusrat Fateh Ali Khanのカバーで、Songline(2006年)とLive at Georgia Theatre(2012年)に収録されている。Derek Trucks bandが最も輝いていた時期の、乗りに乗ったLive at Georgia Theatreでの演奏は素晴らしいの一言で、よくこのカッワーリーと呼ばれるイスラム神秘主義スーフィズム歌謡をギターでカバーするなどという荒業を使ったと感心してしまう。


本家本元のNusrat Fateh Ali Khanについて少々。1948年生まれで1997年に48歳の若さで没している。パキスタンの国民的なイスラム教神秘主義スーフィズムにおける儀礼音楽カッワーリーの歌手である。ヌスラットを知ったのは、1999年にイスラマバードに近い軍事都市のジュレムで行われた、パキスタン人の友人の結婚式に参列した際に、友人の弟からCDを貰ったのがきっかけだった。ミュージシャン崩れの友人の弟は「お前、音楽好きなんだって。パキスタンが世界に誇るヌスラットを是非聴いてくれ、ちょっと前に死んじまったけどな」と数枚のCDを差し出した。日本に戻って、そのCDを聴いたときの衝撃は大きかった。小型のリードオルガンであるハルモニウムにタブラ、そしてターリー(手拍子)をバックに、主唱者と副唱者の掛け合いが繰り返される。次第に即興の要素が入り込み、曲のテンポが速まるにつれて、ヌスラットの精神の高揚感が感じられ、トランス状態に入ったヌスラットの艶声が響き渡る。カッワーリは歌い手と演奏者、聴衆をトランスに導く音楽で、PBはライブでヌスラットを見たときに、腰を抜かしたとどこかに書いていたことを記憶している。


ヌスラットの存在を世界に知らしめたのは、80年代にワールドミュージックに接近していたピーター・ガブリエルが主宰していたリアル・ワールド・レーベルだ。パキスタンではすでに若くして国民的歌手として地位を確立していたが欧米のマーケットを意識したNight Song(1993)などの名盤を残し、ファン層を拡大した。そして、映画Dead man Walking でEddie Vedder とデュエットしたThe Face of LoveとThe Long Roadで一気に認知度が高まることになる。Vedderが熱心なヌスラットファンだったことから実現し、前者は楽曲も完全にVedderがヌスラットに寄せたものになっており、後者はヌスラットがVedderのコーラスを担当している。曲のプロデュースははRy Cooderで、両方でギターを弾いている。

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