備忘録 Maze Featuring Frankie Beverly – Live In New Orleans(1981年) アナログ盤

一般的にソウルミュージックのライブ名盤というと、Donny Hathawayのビターエンドの「Live」が頭抜けて人気、そのほかJames Brown「Live at the Apollo」、Aretha Franklin「Live at the Fillmore」、King Curtis「Live at the Fillmore west」、Otis Redding「Live in Europe」、Curtis Mayfield「Live!」などが真っ先に挙げられるのだろう。勿論、Sam Cook「Harlem Square Live」やBill Withers「Live at Carnegie Hall」、Parlament「P-funk Earth Tour」などを推す方も多いだろう。いずれも、自分の愛聴盤として聴く機会が多い盤である。個人的には上記に加えGil Scott-Heron & Brian Jacksonの「It’s your world」、Chuck Brown & Soul Searchersの「Go-Go Live」やSpinersの「Live!」やOSTの「Whattstax」などを好んで聴いている。あまり紹介されているのは見たことがないのだけど、Booker T & The MG’sの本気の演奏を聴くことができる「Funky Broadway Stax Revue Live At The 5/4 Ballroom」も名盤だと思う。

中でも一番出番が多いのが、気持ちが良いグルーブ感が横溢するMazeのLive in New Orleansというアルバムなのだけど、Maze自体がソウル好き以外には知名度が低いこともあり、名盤として挙げられることはあまりないような気がする。

Mazeは1970年にフランキー・べバリーがフィラデルフィアで結成したアメリカのソウルバンドで、バンドの一体感とベバリーのバリトンボイスが特徴的な、オールドスクール指向のグループ。どれだけタイトな演奏かというと「STUFFの演奏にボーカルがのっかっているような感じ」とは言い過ぎなような気もするがSTUFFと同質のグルーブ感がこのバンドにはあります。マービン・ゲイに気に入られ(前身のRaw Soul時代に)1976年にバンド名をタイトルとしたアルバムを発表。大ヒット曲はないものの、70~80年代に7枚のゴールドディスク(50万枚以上の売り上げ)を出しており、流行を追うリスナーからは素通りされながらも熱心なソウルファンに支えられてきたグループという印象がある。2009年にMazeのトリビュートアルバムが発売され、ジョー、メアリー・J 、ラヒーム・デヴォーン、ミント・コンディション、ミュージック・ソウルチャイルド、レディシなど当時のオーガニック系ソウルミュージシャンの代表格が名前を連ねていることからも、Black music for black peopleのイメージが強い。(ちなみにこのトリビュート版はバックがMAZE本人が演奏しており、これまた素晴らしい。)自分は後追いで聴いたクチだが、黒人音楽にのめりこみ始めた80年代後半にもSilky Soulという名盤を出しているのに、全くノーマークであった。

90年代にちょくちょく行っていた薄野にあるSoul CopというバーでMazeをリクエストしたところ、当時のマスターが「先代のマサさん(前店主)がやってた頃(80年代)、フランキー・ベバリーが来店して、こともあろうかマサさんに言い寄ったんだよ、あいつ。」と懐かしそうにサイン入りのInspiration(確か)を見せてくれたという思い出がある。話の真偽はともかく、ベバリーがソウルコップに来たことを聞いて、とてもうれしい気持ちになったことを覚えている。

年末にDENONのレコードプレーヤーDP-500Mを新たに購入したこともあり、アナログ漁りの熱が再燃し始めたところに、先日狸小路7丁目のFresh AirでMaze Featuring Frankie Beverly – Live In New Orleansを見つけてしまった。2,800円と微妙な金額だが、ここで逃すとしばらく出会えないかもしれないと購入。一緒にSeawindのファーストSeawind(CTI盤)もゲット。

長年CDで慣れ親しんできた本作品のアナログ盤はいかに?まず、驚いたのがアナログ盤は収録曲がCDよりも2曲多いことを発見。CDではChanging Timesが1曲目だが、アナログ盤はCDでは省かれているIntroからYouに続き、リニア―にChanging Timeが続いている。さらにはこともあろうかCDでは名曲Happy Feelin’sも抜かれている。実はこのライブのDVDも所有しており、アナログ盤と同じ始まり方をしていて「こんなカッコいいイントロ部分とYouをCDに収録しないのはなぜ?」と疑問に思っていた。但し、DVDもThe Look In Your Eyesが入っておらず、ライブを最も忠実に収録しているのはアナログ盤だということを今回改めて発見したのである。疑問が解消されたわけではないが、少なくとも音源を確保でき嬉しい。

アナログ盤のトラックリスト
1
1-A1 Introduction      0:30
2-A2 You          5:54
3-A3 Changing Times     5:11
4-A4 Joy And Pain      9:45
4
5-B1 Running Away     5:56
6-B2 Before I Let Go     5:07
7-B3 We Need Love To Live 4:50
8-B4 Reason         5:04
2
9-C1 Happy Feelin’s     5:28
10-C2 Southern Girl     6:22
11-C3 Look At California   11:00
3
12-D1 Feel That You’re Feelin’ 9:48
13D2 The Look In Your Eyes  7:22

Side 1, 2 & 3 recorded live at the Saenger Theatre, New Orleans, LA.
Side 4 recorded at the Automatt Recording Studio, San Francisco, CA.
Mastered at Capitol Records.
※アメリカ盤はB面がSide4となっていて、スタジオレコーディングの新作4曲が入っている。

CDのトラックリスト
1 Changing Times
2 Joy And Pain
3 Southern Girl
4 Look At California
5 Feel That You’re Feelin’
6 The Look In Your Eyes
7 Running Away
8 Before I Let Go
9 We Need Love To Live
10 Reason

DVDのトラックリスト
1 You
2 Changing Times
3 Joy And Pain
4 Happy Feelin’s
5 Southern Girl
6 Look At California
7 Feel That You’re Feelin’
Bonus Video Tracks
8 Back In Stride
9 Never Let You Down
10 We Are One

さて、アナログ盤の音質はいかに。90年代からCD版でいきなり幕を開けるChanging Timesの演奏に慣れていたため、MCが盛り上げながらバンドを紹介しYouの演奏が始まることだけでも興奮させてくれるのだけど、アナログ盤の音質は非常に良い。月並みだが、音の温かみ、倍音、スクラッチノイズ、バランスなどの要素で、ライブ部分は総合的にCDの音質よりも自分の好みの音に近い。当然、DP-500MにMOGAMIのRCAケーブルをつないだ効果もてきめんで、前所有の古いレコードプレーヤーよりもレコード再生のクオリティが上がっているというのもある。とはいえCDの音質に問題があるというわけではなく、新録のSIDE4はCDもアナログも甲乙つけがたい音質だ。名曲Before I Let Goなどはぬけの良いCD音源の方が気持ちが良かったりもする。MAZEのように打ち込みが無く、限りなくオーガニックな演奏にバリトンボイスのボーカルが合わさったような音楽は基本的に録音状態の良いアナログ盤が最良の媒体となるのだろう。

全て聞き終わった後は2,800円は安い買い物だったとの結論に至った。「気になるレコードとの出会いは千載一隅と思え」の教訓が生きた買い物となったが、先立つものも乏しいのに、アナログ沼の蓋を開けてしまったような気がする。

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