
令和5年の天皇誕生日に苫小牧沖の遊漁船に乗り、鱈を釣った。ターゲットはサクラマスだったのだが、それには振られ、本命ではない鱈4本と無数のスケトウ鱈を釣った(スケトウは数本だけ持ち帰った)。鱈は産卵後でタチは抜けていたが、1尾5KG前後で80㎝を超える中型魚が4本釣れた。
マス狙いだったので、スロジギ用の竿に小型ベイトリールというセッティングで、150G位のジグを振る釣り方。釣り始めて、ジグだとフォール途中でスケトウが食ってくるのが煩わしく、220Gのマスシャクリ棒に変えたとたん、スケトウとは違う引き具合を感じ、あげてみると鱈。100㍍べた底から5KGの鱈を小型ベイトリールで引き上げるのはかなりの重労働ではあるが、鱈はあまり暴れないため、釣り味はいまいち。水面近くなると白いおなかを見せて完全降参の姿で対面となる。その場では「ちっ、マスじゃねー」となってしまうが、冷静に考えるとこのサイズの鱈は小型のマスの数倍高い商品価値があり、食味も素晴らしい。むしろ、喜ぶべきゲストで、残念な気持ちになったことを反省した。
同行した恐妻家の友人が一本獲った鱈も「台所が小さくて、こんな大きな魚をさばいて、血まみれにしてしまうと奥方に殺される」と、私が持ち帰ることに。露語通訳を生業とし、幾度と渡った北方4島で美味しい鱈の料理法を習得した御仁にとっては残念至極だろうが、奥方には逆らえないようだ。5本の鱈と数本のスケトウが入ったクレートは30KG近くあり、船から陸揚げするときに難儀した。帰宅途中で料理好き男子の友人に大き目の鱈1尾とスケトウ数本貰ってもらい、鱈4尾とスケトウ数尾を持ち帰り捌き始めるも、でかいので大変。一番大きなお腹をした鱈の胃袋からは、40CM位のスケトウも出てきた。台所を血の海にしながら、全てを3枚おろしに仕上げたのは午後8時過ぎ、余力は残ってなかったが何とか「じゃっぱ汁」を作り、その晩の夕食とした。頭部が滅茶滅茶美味しかった。母型のルーツが青森の旧三厩村にあり、バイクに乗っていたころ訪問する途中のどこかでそのじゃっぱ汁を食べてとても美味しかった記憶がある。要は鱈のアラ汁なのだが、新鮮なアラで作ると格別にうまいのだ。「鱈汁と雪道は後が良い」という諺(?)があるように、大量に作って煮込めば煮込むほど、良い出汁が取れるのが鱈である。
翌日からは鱈三昧の日々が続いた。「豆乳タラチリ」、「鱈とジャガイモのグラタン」、「ポワレ」、「フィッシュ&チップス」、「鱈肝の酒蒸し」、洗浄した胃袋で「チャンジャ」などなど。数匹捌いたスケトウも「フライ」にした。札幌の名ベーカリーどんぐりの逸品であるフィッシュフライサンドもスケトウを使っている。3本のスケトウにはすけ子が入っており、「たらこ」を仕込み、現在熟成中である。肝の酒蒸しは北陸では鱈の身よりも人気とのことで、試してみたが紅葉卸とポン酢で食べると最高の日本酒のアテとなった。あん肝よりも淡泊ながら、それでも十分濃厚で、青森の地酒陸奥八仙が瞬く間に減っていってしまった。
タラは洋食のバリエーションも多く、北欧から南欧までそれぞれの地域で多彩な料理に使われる。今回は定番フレンチのポワレにして、レモンバターソースを試した。新鮮な背の柵はブリッブリで身崩れすることは無かったが、繊細な皮目が鋳鉄パンに引っ付いてしまい、見た目△味上々の仕上がりとなってしまった。釣れたての鱈は身が締まっており、かなり歯ごたえがある食感である。President社のバターで作ったレモンバターソースを吸ったタラは最高に美味しかった。もう一つ調理した洋食のメニューは昔バルセロナのレストラン「セッテポルタス」で食べたアンコウ鍋の鱈のアラ・バージョンである。スペインではバカラオ料理が有名だが、塩漬けを作るのは次回の愉しみとしたい。レシピが無いので、記憶に頼るしかなかったが、ブーケガルニとニンニクで出汁を取り、きれいに処理した鱈の頭とカマ部分を煮込み、パプリカ粉で味と色を付けることとした。パプリカを使用していたこと以外、記憶自体が曖昧なので、作った料理の味が似ていたかどうかは不確かだが、美味しくいただくことができた。写真で確かめると、セッテポルタスでは大量のサフランに味付け程度のパプリカを使用しているようで、スープは黄色寄りの褐色で薄めの色。今回作ったスープはパプリカ100%の褐色スープで全くの別物。ま、でも現地で購入したガンバピルピル(パプリカとニンニクとカイエンの香辛料)を使用したおかげか、バスク地方っぽさは感じさせるということで、大目に見ていただきたい。
フィッシュ&チップスは英国Harry Ramsden’sのレシピを真似て、等分の小麦粉と片栗粉をスタウトで混ぜ、かなり粘度の高いバター(タネ)を鱈にまとわりつけて揚げた。モルトビネガーが無かったので、ワインビネガーに黒ビールを混ぜて沸騰させたものを代用、それをバシャバシャかけて食べる。札幌市内のアイリッシュバーで何度もフィッシュ&チップスを食べてきたが、これほどおいしいのははじめて、というほど別格的な旨さであった。鱈をたっぷりと使ったブランダードもうますぎで、クラッカーに乗せたりパンにはさんでサンドイッチとして会社に持ってきたりと、楽しんでいる。
というわけで、内臓の一部と骨以外の鱈のすべてを存分に堪能している一週間である。スーパーで買う鱈は早くて捕獲後2、3日、市場でも大概1日以上経っているもので、捕獲後半日に処理を済ませた新鮮この上ない魚を味わうことができるのは釣り人の特権に他ならない。今回作った料理以外にも粕漬、みりん干し、ポン鱈、こぶ締めなど美味しそうな調理バリエーションも多い。500G位の鱈釣り棒にタコベイトを付けてしゃくり続けるという旧石器時代の鱈釣りのイメージが払しょくされ、ライトタックルでも捕獲できることが判明したので、本気の鱈狙いの釣りもありかな、と考えはじめている。
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