備忘録 アナログでDavid Sanbornを聴く

David Sanbornが78歳で亡くなりました。

サンボーンは10代の頃からAlbert King やLittle Miltonなどのブルース畑のアーチストに重用されていたとのことで、甘いルックスに似合わず、こぶしの効いた歌心あるサックスを吹く人という印象です。

日本ではChange of Heart 収録のChicago Song当たりが良く知られた曲になるのでしょうか。ソロアルバムはCDでそこそこ揃えましたが、アナログ盤にまでは手が伸びていません。追悼というわけでもないのですが、何となくアナログでサンボーンのサックスを聴きたいと思いました。

歌伴での出番が多いアーチストでしたので、所有するレコードから数枚ピックアップして聴いてみました。意識して聴くと、今更ながら非常に素晴らしい演奏です。また、おそらく偶然ですがアルバムの中で、特に気に入っている曲にサンボーンがフィーチャーされていることが多いことを、今更ながら知ったという感じです。

【Talking Book • Stevie Wonder (1972)】 “Tuesday Heartbreak”-陽気な失恋ソングです。アルバムの中でも気に入っている曲で、若きサンボーンの力のこもったサックスが聴けます。

【Still Crazy After All These Years • Paul Simon(1975)】“Some Folks’ Lives Roll Easy” -ヒットシングル50 Ways To Leave Your LoverのB面です。Bob Jamesのエレピが気持ちよく鳴り、邪魔しない程度にサンボーンはアルトを吹いています。本アルバムはMichael Brecker と2ホーン体制で、両者の違いがあからさまに出ていて興味深いでしょう。Have a good timeエンディングのBreckerのカオスなソロは歴史的な名演といっていいのではないでしょうか。

【Born to Run • Bruce Springsteen(1975)】”Tenth Avenue Freezeout”-ハウスバンドのクラレンス・クレモンス、サンボーン、ブレッカー兄弟の贅沢なホーンイントロで始まる、STAX作品を思わせるリズムの名曲中の名曲。楽し気な雰囲気が伝わってくる名演奏です。

【Gorilla • James Taylor(1975)】“How Sweet It Is (To Be Loved by You)” “You Make It Easy”– マービン・ゲイの名曲をカバーしたHow Sweet It Isは軽やかで粘っこいサンボーンのソロが聴けます。King Curtisのサックスに似ているような印象です。You Make It Easyでは得意のブルージーなフレージングが冴えわたっています。

【Second Childhood • Phoebe Snow(1976)】-”Two Fisted Love” “Sweet Disposition”-アルバム冒頭を飾るこの曲は、ファーストアルバムにして名作だったSan Francisco Bay Bluesの路線をそのまま引き継いだ佳曲です。ジャジー+ブルージーな気だるさ満点のメロディーに、節回しの効いたサンボーンのサックスが夜の雰囲気を醸し出している感じです。Snowのこのアルバムも前作に劣らず聴きどころの多いアルバムです。

【Love Play • Mike Mainieri(1977) “Sara smile -日本で特に人気の高い盤”Love Play”。先日、発売されたレココレの海外フュージョンBest100でも上位にランクインしていました。ブレッカーのテナー・サックスが鳴り響く大バラードI’m Sorryの陰に隠れてしまいますが、サンボーンが泣きのアルトを吹くHall&Oatesの名曲Sara Smileも負けてはいません。サム・テイラー張りにこぶしを効かせて、美しい演奏を聴かせてくれくれます。

【Sleeping Gypsy • Michael Franks(1977)】-”In the Eye of the Storm”, “Don’t Be Blue”,”Antonio’s Song (The Rainbow)” -これも名盤ですね。バックがCrusadersの面々が務め、サンボーンとブレッカーの2頭ホーン体制です。フランクスのなよっとしたボーカルにカツを入れるがごとく切れのあるフレージングを聴かせてくれます。特にB面冒頭の“Don’t Be Blue”,”Antonio’s Song (The Rainbow)”以降の連続性は、数あるAOR名盤のなかで屈指の流れと思っています。

【Living in the U.S.A. • Linda Ronstadt(1978)】-”Alison”, “Ooh Baby Baby”-アルバムの中で一番おいしい曲にサンボーンが参加しています。コステロのアリソン、ミラクルズのOoh Baby Baby、両方ともオリジナルよりもしっとりしていて、哀愁を帯びたアレンジになっています。その中で、サンボーンのこぶしの効いたアルトは存在感が際立っています。

【You’re Only Lonely • J.D. Souther(1979)】-全編 大瀧詠一が「こんなアルバムを作りたい」と言ってできたのがロング・バケーション、というのは知られた話ですね。共通するのは古き良きアメリカのロックンロールを懐古的にはなり過ぎず、その時代の空気感を取り入れて成功したアルバムという感じでしょうか。要所要所でサンボーンの伴奏が聴くことができます。

Lucky Seven • Bob James(1979)】-全編

【The Long Run • Eagles(1979)】-”The Sad Café”-Eaglesの最後のスタジオアルバムのB面最後の曲です。Joe WalshとJ.D. Southerのペンによる美しい楽曲です。曲はサンボーンのソロでフェイドアウトしていきますが、一時代を築いたEaglesの終わりを告げるような寂寥感を漂わせています。

【Pirates • Rickie Lee Jones(1981)】-全編

【An Innocent Man • Billy Joel(1983)】-”Easy Money”-副題にJames BrownとWilson Pickettに捧ぐとあるように、のっけからJoelがめっちゃシャウトすます。アルバム全体が、60年代ソウルへのオマージュ的なコンセプトアルバムで、サンボーンの演奏は冒頭のこの曲のみです。中2のリアルタイムで聴きまくった愛聴盤ですが、改めて聴くと素晴らしいですね。Toots Thielmansのハーモニカが美しい、Leave A Tender Moment AloneがJoelの全楽曲で一番好きな曲かもしれません。

【Undercover • Rolling Stones(1983)-”Pretty Beat Up” ストーンズのSAXと言えばBobby Keysなのですが、本作ではサンボーンが起用されていて、しかも、なかなか地味な曲での出番です。あまり印象に残らない曲で、さらに印象の薄い演奏という感じでしょうか。謎の起用です。

アナログで所有しているのはこんな感じですが、70代前半から80年代中盤にかけてはサンボーンは引っ張りだこだったようで、くまなくクレジットを調べたらまだありそうな気もします。

CDでしか持っていないのですが、”Time Again(2003)”はよく聴きました。冒頭から怒涛の名カバー- ハービー・マンで有名な”Comin’ Home Baby”、ドナルド・バードで有名な”Cristo Redentor”、スタンダード曲 “Harlem Nocturne” 、ジョニ・ミッチェルの”Man from Mars、”スティービーの名曲”Isn’t She Lovely”、スタンレー・タレンタインの代表曲”Sugar” が続きます。吹きまくるというよりは、抑制気味にホーンを鳴らすストイックな演奏が、非常に良いと思っています。バックを務めるクリスチャン・マクブライトとスティーブ・ガッドも演奏がコンパクト&タイトで、全体を引き締めている印象です。サンボーンのソロ作では、一番好きな盤かもしれません。

小児まひのリハビリとして始めたサックスとのことですが、大輪の花を咲かせ、多くの人に愛される音楽を創作してきたサンボーンさん。ご冥福をお祈りします。

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