先日、釣りに行く途中にDavid CrosbyのRodoliguez for a nightがラジオから流れてきました。初めて聴く曲でしたが、あからさまにSteely Danチックな音作りで、従来のDavid Crosbyの音楽とはかなり趣が違っています。調べてみると、2021年発売のFor freeという彼の遺作となるアルバムからの曲で、Donald Fagenが作詞ということですが、あれだけSteely Danチックな曲になるように作りこむということはCrosbyはSteely Danの楽曲がが相当好きなのでしょう。CSN&YのDayliht Again(82年)冒頭の曲、Turn Your Back on Loveが少しそれっぽいですが、Fagenの影響とするのは強引な解釈でしょう。Rodoliguez~は、ある意味、スティーリー・ダンのメロディーの展開のいいとこどりで、若干パロディにも聞こえます。ギターにDean Parksを起用しているのも、Steely Danっぽさを表現することに大きく貢献している感じです。曲は非常に良い出来栄えで、思わずムムムとなってしまいました。機会があればFor freeもアルバムで聴いてみたいと思っています。
Donald Fagenは寡作で知られたミュージシャンですが、他のアーティストやサントラへの提供曲に関しても、数は少ないですが、少しだけあるようです。手持ちの音源を聞き返してみましたが、Fagenの手癖のようなものが要所要所で再確認することができ、楽しかったので記録しておきます。
FM(1978年)‐OST
有名な曲ですが、アルバム曲ではなくサントラ提供曲ということで、一応載せておきます。Ajaの制作中にお呼びがかかって急ごしらえした曲ということなので、全盛期のスティーリー・ダンの良さがすべて詰まっています。アルバムにはB面最後にFM (reprise)Pete Christliebのサックスソロがフィーチャーされた歌無しバージョンが収録されており、こちらも良い出来です。この人はTom WaitsのNighthawks at the Diner (1975年)でサックスを吹いていますが、場末感のある滋味深い音を出してくれますね。
このLPは最近たまたま状態が良いものを100円で購入したのですが、多分値段を間違えていたか、あまり音楽に詳しくない人が値決めをしたのか、いずれにしてもとても得をした気分でした。(しかも2枚組!)

Love will make it right(1983年)Diana Ross-Ross
Gary KatzプロデュースでFagen自身がシンセサイザーのソロを弾いています。それだけで、この盤を所有する意味が(少なくとも私には)あると思い購入しました。ソロはNightflyのシンセ音と全く同じで、その部分だけ切り取って聴くと、Nightflyに収められた曲と云われても違和感がありません。Jeff PorcaroのドラムもSteely Danチックな雰囲気を作っていると思います。Dianna Rossはどんな作曲家の曲も自分の歌にしてしまう存在感がありますので、癖の強いFagenのこの曲もご多分に漏れずしっかりと御大の曲となっています。逆に言うと、Fagen感が薄め・・・・
因みに、アルバム冒頭のThat’s How You Start OverはMichael McDonaldの作品ですが、こちらもらしさ満開の佳曲でございます。しかし、Porcaroを初め、Eric Gale, Steve Lukather, Joe Walsh他をサクッと集めて、アルバムを制作するのですから、その頃のRossさんの磁力は相当なものだったのでしょう。

Century’s End(1988年)Donald Fagen-OST
サントラ提供曲で、自身が歌っています。映画「ブライト・ライツ・ビッグ・シティ再会の街」サントラ盤からの曲のシングルで「The Nightfly」以来6年ぶりにFagen作品が出てきたことで、話題を集めた曲でした。これもなかなか凝った作曲で、展開が激しい独特のFagenの世界が楽しむことができる曲となっています。この曲をアナログで聞きたいということで、レコードまで買ってしまいました。ドーナツ版はフェイゲン信者の間で高値で取引されていますが、LPは数は少ないですが二束三文で売られています。CDの音がいまいちでしたので、レコードを聴いたときは感動しました。リズムの音が力強く、印象が違って聞こえます。トランペットにルー・ソロフ、テナーにマイケル・ブレッカーを使っていて、ホーンも聞きどころです。ジェイ・マキナニーの小説も当時読みましたが、どう考えても主人公が健康優良児的なマイケルJフォックスには似つかわしくないキャラクターで、違和感を覚えた記憶があります。この曲の発表後にFegenはまた沈黙し、次に彼の作品を聴くことになるのはセカンドソロのKamakiriadということになります。(その間、The New York Rock and Soul Revue(1991年)のライブアルバムが出ましたが)

Big Noise, New York(1993年)Jennifer Warns-Hunter
本人のバージョンは、KamakiriadからのシングルSnowboundのB面に収録されていましたが、シングルCDを購入して耳にした人がどれだけいたのでしょうか。Nightflyトリロジー(2007年)のボーナストラックとして入っていて、改めて日の目を見たという感じです。時系列的にはJennifer WarnsのHunterの方がKamakiriadよりも数か月早い発売なので、Warnsに提供するために書いた曲と考えるのが自然でしょう。出来が良かったので、自分でも演ってみたという感じなのでは。
WarnsのHunterというアルバムは作品全体としては地味な印象ですが、エンジニアリングが突出して優れていて、音の良いCDとして必ず引き合いに出てくる作品です。もともと抜群の歌唱力を誇る彼女ですのでBig Noise, New Yorkの仕上がりも美しく仕上がっていて、コーラスで参加しているFagenの声も雰囲気を盛り上げてくれています。WaterboysのThe Whole of the moonなんかも入っており、かつ高音質でFagenの曲が楽しめる盤として、たまに自宅のCDトレーに乗っかっています。アナログで欲しい盤ではありますが、1990年代以降のアナログはなかなか出回っておらず、あっても高嶺の花の場合が多いのです。

MEDICAL SCIENCE(1993年)Walter Becker-The 11 Track of Whack
Fagenソロ2作目Kamakiriad(1993年)はBeckerがプロデュースしていますがBeckerの初ソロである本アルバムはBeckerとFagenの共同プロデュースとなっています。MEDICAL SCIENCEは日本版のボートラなので、輸入盤には入っていません。嘘つきケイティなどで担当した、Roger Nicholsがエンジニアリングをしています。なので、両方ともSteely Danのスピンオフ的なものとして聴くと、なるほど、と手を打つ場面もあるかと思います。この後にSteely Danでの活動再開へと発展し、ライブツアーさらにはライブ・アルバムAlive in America(1995年)へとつながっていきましたね。アルバム全体にリラックスムードが漂っているのは、当時Beckerがハワイに住んでいたことも関係るのかないのか。スティーリー・ダンの緻密な音を期待すると肩透かしを食らいますが、エッセンスはちりばめられており、Beckerのギターソロが結構聴きどころとなっています。スティーリー・ダンは一筋縄ではいかない毒気を感じられる曲が多いけれど、その毒はBeckerに由来しているということが良くわかるアルバムかと思います。

Fagen作品はデザインの良いビンテージ車と一緒で、聴きこむごとに愛着がわいてくる感じがします。数年前のレココレの70年代に出たアルバムBEST200でAJAが1位となっていましたね。40年前の楽曲でも新しく聴こえるのが不思議で、おそらくは今後も風化されることなく、ロック史の1ページを飾り続けるのでしょう。今でもSteely Dan作品やFagenソロ作品はターンテーブルに乗る機会が多いです。
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