ディランの音楽を存分に楽しむには、歌詞(の文学性)を理解することが必要だと思っています。そういう意味で自分はあまりディランの音楽の神髄を楽しめていないと自負しています。だけど、ディランには猛烈に惹かれてしまいます。一番好きなアルバムはBefore the floodかな。ディランは2度来札し、最初は1997年2月24日北海道厚生年金会館、2回目は2014年4月13、14日の2日間Zepp Sapporoでライブを行いました。私は2014年4月14日のZeppに行きました。すべての曲が原曲の判別がつかないほどアメリカーナ風にアレンジされ、Time out of mind以降シグナチャーとなったボソボソ歌唱でしたが、圧倒的な存在感と演奏力の高さに文字通りノックアウトされてしまいました。ギターのチャーリー・セクストンも良い味を出していて、本当にいいライブだったと思っています。ライブ前にすすきのの満龍でラーメンを食べながら、数時間後に本物のディランを見るということに胸を躍らせた記憶があります。のちに読んだ記事で面白かったのが、ディランが野球を見たいと言い出し、4月12日(土)に札幌ドームで行われた日ハムと西武戦(大谷と菊池の好カード)を観戦。試合後に気に入った陽岱鋼と中田翔のタオルを所望したと記録が残っていることです。
ライブに行ったことがきっかけで、ひょんなことからディラン好きとして、ラジオで紹介されてしまいました。(コアなファンが多数いる中恐縮しきりでしたが)

本盤はThe Bandとの共作Planet WavesとDesireの間にリリースされ、ディランの最高傑作に上げられることは無いものの、5本の指に入るという評が多い名盤です。米国に数多いるディラン評論家の多くは本作の歌詞の内容が妻サラ・ノズニスキーとの結婚解消の記録として解釈としているようですが、本人は自伝的であることを激しく否定し、アントン・チェーホフの短編小説に着想を得たと主張しています。音楽的にはリラックスしてメロディアスな雰囲気の中、カントリーの影響が強いアコースティックなスタイル、つまり若干原点回帰しているようでもあります。
A1 Tangled Up In Blue
A2 Simple Twist Of Fate
A3 You’re A Big Girl Now
A4 Idiot Wind
A5 You’re Gonna Make Me Lonesome When You Go
B1 Meet Me In The Morning
B2 Lily, Rosemary And The Jack Of Hearts
B3 If You See Her, Say Hello
B4 Shelter From The Storm
B5 Buckets Of Rain
多くの曲がメジャーコード主体で、歌詞に込められたシニシズム、皮肉的なユーモアで扱われた愛の世界とは裏腹な、乾いた空気を感じさせてくれています。A1,A2,A4,B4がライブ定番曲で、A4がベストテイクという人もいれば、A1だという人もいます。僕はB4が好きなのですが、アルバム収録バージョンではなくて、1996年の映画Jerry Mguireのエンディングで使われた同曲ファーストテイクのバージョンが一番良いと思っています。トンネルの先の光を見させてくれるような陽気さ好みです。
歌詞の一節はこんな感じです。
またこの道を通ることがあれば
安心してください
彼女のためにベストを尽くす
そのことを約束する
鋼鉄の瞳の死と男たちの世界で
温かくあるために戦っている
「彼女は言った。(あなたが)嵐からの避難所だと」

ジャケットの裏には80年代に日本でも人気が出たジャーナリストのPete Hamillがライナーノーツを書いていて「ここにディランが感情を取り戻している…イェイツやブレイクのように個人的で普遍的だ」と、フォーク時代のディラン再来を賛辞するような言葉を残しています。
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