備忘録 猟盤の記録:1975年特集vol.3-Liveat the Lyceum Theatre, London-Bob Marley and the Wailers

高校を卒業し、ふらふらしていた時期がありました。バイト2つを掛け持ちしながら、円山裏参道のアパートを借りて、籍を置いていた予備校には全く行かず朝から晩まで友人たちとすすきののドーナツショップに入り浸っていました。このアルバムに出会ったのはその時期だったと思います。そのころはどっぷりブラックミュージックにハマっていたころで、貸しレコード屋さんにある黒人音楽名盤を片っ端から聴きまくっていました。ひときわ気に入ったのが本作で、あまりにも気に入りすぎて、アパートに手書きでBob Marleyと表札を付けたり、意味不明の行動をとっていました。阿保だったなぁ・・・

前作Natty Dreadで人気に火が付き始めた直後にリリースされた本作でMarleyは英国での人気を決定づけます。革命前夜を経験したわけではありませんが、おそらく革命の前はこんな風に盛り上がるのだろうと思ってしまう熱狂ぶりを追体験できるアルバムかと思います。ミュージシャンとお客さんというよりは、指導者と支持者の集まりのような雰囲気とでも言いましょうか、宗教的一体感というかなんというか。Get up stand up, stand up for your rightの言葉に奮い立っているフロアーが容易に想像できます。演奏はなんといってもアストン・バレット(ベース)とカールトン・バレット(ドラム)のリズム隊兄弟の音に圧倒されます。低音を最大限まで響くように改造したアストン・バレットのベースは強烈で、生で聞いてみたかったですが、昨年鬼籍に入ってしまいました。存外に高音質で臨場感を感じることができるのはRolling Stones Mobile Studio録音のおかげでしょう。かのSmoke on the waterやWho’s Next, ならず者を録音した名移動式スタジオですね。 

A1 Trenchtown Rock
A2 Burnin’ & Lootin’
A3 Them Belly Full
A4 Lively Up Yourself
B1 No Woman, No Cry
B2 I Shot The Sheriff
B3 Get Up, Stand Up

A3,A4, B1がNutty Dreadから。B面に人気曲が集まっていますが、私はA面が好きで偏って聴いてきました。A1ではこう歌っています。

Trench town rock, Give the slum a try !
トレンチタウン・ロック、スラム街にチャンスを!
Trench town rock, Never let the children cry !
トレンチタウン・ロック、子供たちを泣かせるな!

トレンチタウンはジャマイカ首都キングストンのゲットー、地球の歩き方で「間違っても近寄るべきではない」と警告されている不穏なエリアとのこと。Marleyの作品に通底するテーマではありますが、弱者を応援し、腐敗した権力と戦う姿勢を強く感じられる曲です。

蛇足ですが、Marleyはサッカーフリークでもあり、トッテナム・ホットスパー推しでも知られていました。1978年ころにチームの中心だったアルゼンチンのアルディレス(代表でのケンペスとのホットラインが懐かしいです、のちにマリノスの監督もやっていましたね)が特に好きだったようです。そんなこんなで、勝手に親近感を持っているアーティストなのです。

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