1975年にリリースされたJazz アルバムで時間の試練に耐え、いまだに売れ続けている作品はKeith JarretのKoln ConcertとWayne ShorterのNative Dancerがトップ2ではないでしょうか。あいにくその2枚はアナログの持ち合わせがありませんが、もちろん他にも良作はたくさんあります。
McCoy Tymer(MT)はフリーに傾倒し始める前までのコルトレーンのカルテットでピアノを担当していました。そのINPULSE時代は重く、抑制されたタッチでコルトレーンの名わき役を演じてきましたが、70年代にMilestoneレーベルに移り、オリジナリティに富んだ作品を多く残しています。本作品はRon Caterとコルトレーン時代のバンドメイトのElvin Jonesを迎え、「いっちょ、気合入れたるで」という勢いを感じられる作品だと思います。MTがピアノを普通に弾いている曲に加えて、ハープシコードとチェレスタを引いている曲も多く、一筋縄ではいかない作品となっています。ウィスキーが飲みたくなるタイプのピアノトリオ作ではなく、スポーツドリンクが欲しくなるくらいの熱量と演者の衝動と緊張感が刻み込まれた作品です。アルバムタイトルTrident=三叉の通り、技巧派3人がテレパシーを送りあいながら、手数音数音圧を惜しみなく注ぎ込んだ芸術作品となっています。ジャケのMTは虫の居所が悪い殺し屋のような風貌ですが、知り合いが、居合わせたライブハウスで話しかけたらとても気さくなおじさんだったとの話を聞いたことがあります。


A1 Celestial Chant Harpsichord – McCoy Tyner 6:57
A2 Once I Loved Celesta– McCoy Tyner Written-By – Antonio Carlos Jobim 7:52
A3 Elvin (Sir) Jones 5:25
B1 Land Of The Lonely Celesta、Harpsichord – McCoy Tyner 7:31
B2 Impressions Written-By – John Coltrane 5:01
B3 Ruby, My Dear Written-By – Thelonious Monk 7:50
すべて名曲名演奏ですが、B面が好きです。MTオリジナルB1の哀愁を伴うスピード感あるワルツに圧倒され、コルトレーン作B2ではMT、エルビン・ジョーンズのオリジナルメンバーの熱い安定感のある演奏に、自由度の高いRon Carterのソロも加えられ、いつコルトレーンのサックスが加わってもおかしくないような演奏となっています。B3のRuby My Dearが、これまた良いのです。モンクのオリジナル演奏と比べて、手数が多く、重い演奏がJAZZのダイナミズムを感じさせてくれます。本盤の他曲と比べると、純粋なピアノトリオ演奏なのでアルバムの中では落ち着いて聴こえますが、この曲だけを取り出して聴いてみると、数多あるカバーの中でも過激な部類に入る演奏が繰り広げられていることに気が付きました。名演といっていいと思います。
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