本作では、醜いアヒルの子的な状況を自らに重ねて、ティーンエイジャーの苦悩を歌ったシングル曲At Seventeenでグラミーの女性ポップボーカルパフォーマンス賞を受賞しています。Aftertones(1976年)収録のLove is Blindが坂口良子主演のドラマ「グッバイ・ママ」の主題歌に取り上げられるなど、日本ではとりわけ人気が高かった人ですね。中古市場でも供給過多状況にあるので、Janis Ianのこのころのアルバムは安価に探せます。
とはいえ、この作品は素晴らしい出来ばえです。特筆すべき点が2点ありまして、一つは彼女のSSWの強み、即ち作詞作曲の世界観をそれに似あった歌唱方法で、メッセージを伝えることの巧みさを体験できるアルバムとなっています。作詞作曲が本人で、過剰なプロデュースも施されていないのでJI本人の実像を近くに感じることができます。もう一つは、エンジニアリングが素晴らしいのでレコードの音質が素晴らしいことです。アメリカのアナログ嗜好家が高音質盤の誉め言葉として「Tubey」という表現を使用する人たちがいますが、意訳すれば奥行きがあるとか立体的なとかふくよかなどという意味合いになるかと思います。In The WinterとWatercolorsにストリングスが使われている以外、本作はアコギとシンプルなバッキングで構成されており、CDでは平たんに聴こえる部分も、レコードで聴くとよりTubeyな音が楽しめると思います。同様の現象が、Phoebe Snow(1974年)でも見られ、アナログ盤の良さを感じることができるアルバムだと思います。


A1 When The Party’s Over 2:57
A2 At Seventeen 4:41
A3 From Me To You 3:19
A4 Bright Lights And Promises 4:17
A5 In The Winter 2:13
A6 Water Colors 4:58
B1 Between The Lines 4:03
B2 The Come On 3:56
B3 Light A Light 2:45
B4 Tea & Sympathy 4:28
B5 Lover’s Lullaby 5:25
こういう作り込みが最小限の作品こそ、良く鳴るレコードで聴くとよいですね。私が所有するのはCBSソニー邦盤ですが、米国コロンビア盤は本当に良い音だそうです。アメリカではその盤をサウンドチェックに使う人もいるとのことです。ここは、やはりA2を貼り付けておきます。
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