レココレ2025年7月号で「ジャズ/フュージョン・ギターの名演」が特集されています。この手の特集記事があると、ついつい手が伸びてしまい、困ってしまいますね。2018年6月号のレココレでは「セッション・ギタリストの名手たち」を特集していて、その際にEric GaleとCornell Dupreeのエントリーを書きました。両方とも大好きなギタリストです。今回も、両者がエントリーされていて、DupreeはTeasin’ そしてGaleはBlue Horizon(1981)に収録されているWhen Tokyoがセレクトされています。レコードを買うようになって、7年前には紹介していないGaleのソロ盤や客演盤を入手してきましたので、続きを書きたいと思います。とはいっても、客演盤は数が多すぎますので、「これは!」という数枚に絞っていきます。

まずは80年代のソロタイトル3作。Galeのソロアルバムで大名盤と評される作品は無いものの、粒ぞろいの好盤ばかりで、80年代前半の数作品は特に良いです。Touch of Silk(1980)はアラン・トゥーサンプロデューで、ライナーを担当したクインシー・ジョーンズは”Swamp Funk”の名作と誉めています。メンツはアイドリス・ムハマド(ドラムス、一部楽曲)、チャールズ・アーランド(オルガン)、グローバー・ワシントンJr.(サックス)などを含むファンク・ジャズの重鎮が脇を固めています。金太郎あめ張りのGaleのギターは健在ですが、サイドマンが変わると雰囲気が違って聴こえますね。トゥーサンなのでMeters張りのセカンド・ラインを決めてほしかった気もしますが、ニューオリンズ風味はそこかしこに感じられます。お気に入りはパーカーの「Au Privave」 のカバーと「With You I’m Born Again 」です。全編、スモーキーな雰囲気で、EGのソロの中では一番好きかもしれません。
ジャケット裏に「きぬにふれて えりっくげいる」とひらがなで書かれていますね。Galeの奥さんはマコさんという日本人で、大の日本びいきだったとのこと。この頃は渡辺貞夫との共演も多く、頻繁に日本に来ていたようです。

続いて、日本レーベル「JVC」移籍第一弾 「Blue Horizon」(1981)と「In the Shade of Tree」(1982)です。本当はこの2作に続いて、Island Breeze (1983) も同じ路線で出しているのですが、残念ながら中古レコード店ではお目にかかったことがありません。当時のEric Gale Bandのメンバーにゲストを迎えていて、似た雰囲気のアルバム群となっています。3部作のような連なりとなっており、Galeファンからは軽視されている作品かと思います。 が、しかし、しっかりとしたGaleのヘビーゲージ節は聴けますし、素晴らしい楽曲も含まれています。基本的にGaleはブルースギター弾きの自覚もあるようですし、聴く者もそれを期待します。レココレで選出されたWhen Tokyoもご機嫌です。


本2作はジャケットから想像できるように南国調のコンセプトアルバム然とした作品で、Galeにしてはやけに軽い曲が多く取り上げられている2枚のアルバムです。 GaleはジャマイカでNegril(1975)というアルバムを出していて、ウエィラーズのバレット兄弟やピーター・トッシュと共演するほど、レゲエに傾倒していました。南国風アプローチはGale自身の嗜好を反映させたものと思われ、とても気持ちよさげにギターを弾いていることが想像できます。レゲエやカリプソやサンバのビートにブルージーなギターを乗っけている曲が半分、オーソドックス寄り(ラテンに振れているけれど)の曲が半分、のような構成です。In the shade of the tree からはトロピカルなこちらの曲を。
増尾好秋 Sailing Wonder(1978)
キングレコードのフュージョンレーベル、Electric Bird立ち上げ第一弾の気合の一枚ですね。Gale 目当てで購入し、GaleはA1,A2,B2で弾いています。メンツはほぼStuffなので、サウンドは推して知るべしと思いきや、意外に軽めで面を食らてしまいます。Dave Grusin色が濃く表れている感じでしょうか。いずれにしても、Galeは一聴してわかるこぶしの効いたギターを聴かせ、増尾さんはテクニカルでメロディアスな主旋律を担当しています。ジャケットの通り、夏向けのサウンドです。

Drums – Steve Gadd
Electric Bass – Gordon Edwards
Electric Piano – Richard Tee
Electric Guitar – Eric Gale, Yoshiaki Masuo
Liner Notes – Yozo Iwanami
Synth – Dave Grusin
Lee Ritenour Sugar Loaf Express (1977)
ダイレクトカッティングの高音質盤です。一発録音の緊張感も感じられ、素晴らしいレコードだと思います。個人的にツボなのは、Patrice Rushenのエレピでリトナーのアルバムにもかかわらず、レアグルーブ感を醸しています。Galeに心酔していた25歳のリトナーが手合わせを願って実現したというような記事を読んだことがありますが、Gale先生もバカテクのリトナーを前にして、かなり熱くなってきている様子が伝わってきます。Galeは無骨な音のSuper400 、リトナーは軽やかに335を使っていて、「リーのギターが飛び、エリックのギターが泣く」と帯に書かれていますが、なんとなくそんな感じです。Stuffでも演っていたThat’s The Way Of The Worldでは、いつも以上に頑張るGale先生が聴けます。

Bass – Abraham Laboriel
Drums – Harvey Mason
Electric Piano – Patrice Rushen
Guitar – Eric Gale, Lee Ritenour
あとは、前にも書いたSalina JonesがたまたまStuffと東京に居合わせて制作されたMy love-1981年もやはり外せません。気負いがない演奏だからこそ感じられるグルーブ感があります。Richard Teeとのデュエットがいい感じのEveryday。

最後はHerbei MannのGlory of love (1967)ですね。R&Bのカバーが多いですが、Ron Carter、Roy Ayers、Ray Barrettoなどの参加で黒く時にラテンフレーバー迸る作品です。Galeは5曲で演いておりますが、冒頭のNo use cryingからブルージーな演奏を聴かせてくれています。

客演盤はまだあるので、機会があればフォローアップしていきたいと思っています。
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