備忘録 猟盤の記録:1975年特集 vol.43    Red Headed Stranger – Willie Nelson

Willie Nelsonは御年92歳です。2025年には『Oh What a Beautiful World』と『Workin’ Man』の2枚のアルバムを発表するなど、信じられないほど精力的に音楽活動を続けています。自身のファースト・アルバムは1962年の『…And Then I Wrote』ですので、65年以上にわたり第一線に居続ける、まさにアイコン的な存在です。

我々の世代にとっては、USA for Africaでブリッジ部分を歌う、長髪にバンダナ姿のイメージが強く印象に残っているかもしれません。日本ではややマニアックな存在ながら、純然たるカントリー・ミュージックの“反逆児”としてシーンを席巻し、一巡して現在ではカントリー王道の中の“キング”として君臨していると言っても過言ではないでしょう。

私がWillie Nelsonを聴き始めたきっかけは、1978年のスタンダード・カバー集『Stardust』でした。Booker T. Jonesがプロデュースした名作で、今でも頻繁にターンテーブルに載せて聴いています。また、1998年にDaniel Lanoisがプロデュースした『Teatro』も愛聴盤で、今聴いてもラノワ特有の浮遊感をまとった音作りが古さを感じさせない名作だと思います。

本作『Red Headed Stranger』は、それまで商業的な成功に恵まれていなかったNelsonにとって、大きな転換点となったアルバムとして知られています。アルバムからのシングル曲「Blue Eyes Crying in the Rain(邦題:雨の別離)」は、ビルボード誌のカントリー・チャートで1位を獲得し、グラミー賞のベスト・カントリー・ボーカル(男性)部門も受賞しました。

さらに本作は、ローリング・ストーン誌の「史上最高のアルバム500選」で183位、Country Music Televisionの「カントリー音楽史上最高のアルバム40選」では第1位に選ばれています。評価の高さに比べると、日本では一部のカントリー・ファンの間でしか聴かれていない印象もあります。

本作はいわゆるコンセプト・アルバムで、物語は、主人公の牧師が妻とその愛人を殺害し、法から逃れて生きる姿を描いています。カバー曲も数曲含まれていますが、それぞれが物語の場面をハイライトするように配置されています。私はこの歌詞世界に、セルジオ・レオーネのマカロニ・ウェスタン映画を思わせる空気を感じました。

A面
A1 Time Of The Preacher
A2 I Couldn’t Believe It Was True
A3 Time Of The Preacher Theme
A4 Medley: Blue Rock Montana / Red Headed Stranger
A5 Blue Eyes Crying In The Rain
A6 Red Headed Stranger
A7 Time Of The Preacher Theme
A8 Just As I Am

B面
B1 Denver
B2 O’er The Waves
B3 Down Yonder
B4 Can I Sleep In Your Arms
B5 Remember Me
B6 Hands On The Wheel
B7 Bandera

個人的にはA1「Time Of The Preacher」が最も衝撃的で、アルバム中いちばん好きな曲ですが、ここではやはり大ヒットしたA5「Blue Eyes Crying in the Rain」を挙げたいと思います。歌詞の内容は、おおよそ次のようなものです。

雨が静かに降るなかで、
私はあなたと別れた日のことを思い出している。


言葉は多く交わさなかったけれど、
あなたの青い瞳には、こらえきれない涙がにじんでいた。
あの瞬間が、最後になると分かっていた。


もう二度と会うことはない――
そう思いながらも、何もできずに立ち尽くしていた。


今も雨を見るたびに、
あのときのあなたの瞳と、
胸に残った別れの痛みが、
静かに、しかし確かによみがえってくる。

なお、PVの映像は1986年に制作された、アルバムの物語を基にした同名映画『レッド・ヘッデッド・ストレンジャー』のフッテージで、Nelson自身が主人公レッド・ヘッデッド・ストレンジャー役を演じています。

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