備忘録 ニューオリンズの巨星逝く― Dr. John

6月6日にDr.Johnが逝去。ピーター・バラカン氏のSNS投稿で知った。御年77歳。3年前にAllen Touissantが亡くなり、去年はNeville BrothersのサックスCharles Nevilleも鬼籍に入った。ニューオリンズ音楽の伝道師が次々にいなくなってしまい、寂しい限り。

Dr. Johnの追悼に何か聴こうかと思い、結局このアルバムをCD棚から出してきた。1973年のIn the right Place。Dr. Johnソロ3作目、 プロデューサーに Allen Touissant を迎え、バックをMetersが務めた好盤だ。Dr. Johnには珍しくチャートをにぎわせた「Right Place, Long Time」、「Such A Night」を収録。後者はThe Bandの解散コンサートLast WaltzでDr. Johnが歌っており、あの映像で初めて動くDr. Johnを見たという方も多いはず。自分もそのクチ。

Last WaltzでDr. JohnはVan Morrisonとの共演を果たす。その縁がきっかけでVanの1977年作品、Period of Transitionをプロデュース。この作品は当時の音楽評論家からはシビアな評価を受け、今となってはコアなファン以外からは見向きもされないアルバムだけれど、これが素晴らしい。全編でDr. Johnがファンキーなエレピを聞かせてくれIt fills you upではギターも弾いている。

クレジットはDr. Johnの本名Mac Rebennackの表記

Dr. JohnがドラムにOllie E. Brown、ベースにReggie McBrideを起用し、数あるVan作品の中で本作が最も黒い仕上がりになっている。前者がストーンズのBlack and Blueの数曲、マイケル・ジャクソンのBad、後者がスティービー・ワンダーのファースト・フィナーレ、ファンカデリックで起用されており、推して知るべしという黒ノリの内容だ。Dr. Johnの訃報に触れ久々にCDトレイに乗っけてみたけれど、改めて素晴らしい内容。

Dr. Johnは比較的多作な人で、各年代に名作を生み落としているけれど、中でもRickie Lee Jonesとのデュエットを聞かせたMakin’ Whoopee収録のIn a Sentimental Mood(1989年)は出色の出来。トミー・リピューマをプロデューサーに迎え、初グラミーとなる 最優秀ジャズ・ボーカル・パフォーマンス賞に輝いた。この曲はヒット映画Sleepless in Seattleのサントラにも納められ、もしかしたらDr. Johnの歌の中で最も多くの人の耳に触れた作品かも知れない。

それにしても、若いころから好きだったアーティストの訃報が続く。ま、それも当然で気づけば自分も天命を知る年代。アーティストの皆さんも同じだけ歳を重ねるわけで。

Dr. Johnは自伝「ブードゥー・ムーンの下で」の中でこんなことを書いている。「すべてのヤクザ者たち、放浪者たち、モージョの魔力を秘めた盗人たちよ、そしてすべての人生の演技者たち、個性あふれる街の生き物たちよ・・・おまえたちは、墓場へと向かっているのかもしれない。だが、それでも、あの街のあの香りを消すことだけは、誰にも出来やしない」

ニューオリンズの最大のアイコンがこの世を去り寂しい限りだ。いつかまた行くぞニューオリンズ!

備忘録 ニューオリンズの巨星逝く― Dr. John” への2件のフィードバック

追加

  1. 記事、楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。ドクター・ジョンを初めニューオリンズの巨星が次々と去ってしまった2019年でしたね。
    私もニューオリンズ音楽のブログをやっているのでとても勉強になりました。
    今後も楽しい記事をお願いします。
    ツイートさせていただきます。

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  2. takanoさん、
    コメントありがとうございます。ニューオリンズのブログやられているのですね。拝見させて頂きます。ニューオリンズの明るくて音楽はいいですよね。引き続きよろしくお願いします。

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