長年愛聴してきたトゥーツ・シールマンスの『LIVE』(1974年・1979年日本再発盤)を、550円で購入しました。CDでは長く親しんできた音源ですが、帯付きの美しい盤がこの価格で手に入り、静かに心が躍りました。帯には「話題騒然のハーモニカおじさん」という時代を感じさせる惹句が記されています。オリジナルは1974年の発売ですが、来日に合わせて日本盤独自のジャケットで販売されたようです。ジャズの名盤ガイドなどに頻繁に登場する作品ではありませんが、非常に素晴らしいライブ盤です。



シールマンスの演奏で最も広く知られているのは、自身の口笛とギターによるユニゾンが印象的な「Bluesette」(1962年)でしょう。いつ聴いても色褪せることのない名曲です。彼はジャンルを問わず数多くの共演を残しており、ビル・エヴァンスとの共演盤『Affinity』(1978年)をはじめ、ジャコ・パストリアスの『Word of Mouth』(1981年)に収録されたビートルズのカバー「Blackbird」や、クインシー・ジョーンズの『The Dude』(1981年)に収録された「Velas」などで、その音色に触れたことがある方も多いのではないでしょうか。私自身も中学生の頃、ビリー・ジョエルのアルバム『An Innocent Man』(1983年)に収録された「Leave a Tender Moment Alone」を聴き、それがシールマンスのハーモニカとは知らずに美しい音色に感激した記憶があります。その他にも、ステファン・グラッペリやブラジルのミュージシャンたちとの共演盤など、触れるべき素晴らしい作品が数多く存在します。
ベルギー出身のシールマンスは、同郷のジャンゴ・ラインハルトや、チャーリー・パーカーから多大な影響を受けたといいます。一方で、ジョン・レノンやスティーヴィー・ワンダーは、シールマンスから影響を受けたと語っています。本作はオランダでのライブ録音であり、彼がアメリカに拠点を移す前の、ホームグラウンドならではのリラックスした雰囲気に満ちています。バンドメンバーも心地よい演奏を聴かせてくれますが、特筆すべきはフェンダー・ローズに愛された男、ロブ・フランケンのエレクトリック・ピアノです。決して主張しすぎず、軽く、薄く、そして絶妙なタイミングで奏でられる軽やかな音色が素晴らしいの一言に尽きます。
フェンダー・ローズの話題で少し本筋から逸れますが、私が不動のフェンダー・ローズ使いとして偏愛しているのは、アジムスのジョゼ・ホベルト・ベルトラミ、次いでリチャード・ティー、そしてジョー・サンプルです。いわゆるフュージョン系の奏者が響かせる音色を好んで聴いてきました。そんな折、2022年に『Toots Thielemans Meets Rob Franken: Studio Sessions 1973-1983』という3枚組のCDが発売されました。少し値の張る買い物(6,500円)でしたが思い切って購入したところ、すぐにフランケンの演奏に魅了されました。気負わずにローズを弾きこなす軽やかなアプローチが心地よく、現在最も気に入っている奏者の一人です。

Personnel
Guitar, Harmonica – Toots Thielemans
Electric Piano, Organ – Rob Franken
Guitar – Joop Scholten
Bass – Victor Kaihatu
Drums – Evert Overweg
ギター、ベース、ドラムスのメンバーは本作で初めて知った名前でしたが、バンドとして非常に息が合っており、質の高いアンサンブルを構築しています。
Tracklist
A1 There Is No Greater Love
A2 Blue Lady
A3 Dat Mistige Rooie Beest
A4 Waltz For Sonny
A5 Curta Metragem
B1 Dirty Old Man
B2 The Summer Of ’42
B3 Bluesette
B4 Nice To Be Around
B5 You Are My Blues Machine
B6 C To G Jam Blues
1曲も飛ばすことなく聴き入ってしまう名演ばかりですが、ここでは代表曲であるB3の「Bluesette」を貼っておきます。それにしても、このような名盤をコーヒー1杯ほどの価格で手に入れられたことは、とても嬉しい出来事でした。
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