備忘録 猟盤の記録:1975年特集 Vol.50:MJQ『Last Concert』

1975年特集も、ついに50回目を迎えることができました。ひとまず、この特集は今回で一区切りとなりますね。

手元に50年前のアナログレコードが50枚あるわけですが、ふと「家の中に50年前から当時の形をとどめている品物が、他にどれくらいあるだろうか?」と考えさせられます。そう思うと、レコードという媒体がいかに長寿で、そして持ち主に大切にされてきたか、他にはない稀有な存在であることに改めて気づかされますね。

さて、今回はMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の解散ライブ盤『Last Concert』です。 ミルト・ジャクソン(ヴィブラフォン)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、コニー・ケイ(ドラムス)。1952年の結成後、1955年にコニー・ケイが加入してからの約20年間、この不動の顔ぶれで活動を続けました。ハードバップ全盛の時代にあって、規律を重んじる彼らの端正な作風は、ジャズ史において独特の輝きを放っていたと思います。個人的には、1955年の名盤『Concorde(コンコルド)』に収録されている「朝日のようにさわやかに」が大好きで、今でもふとレコードを引っ張り出して聴きたくなる名演です。

クラシック音楽の素養を持つジョン・ルイスの洗練されたピアノを中心に、正確無比でヨーロッパ的な美意識を感じさせるアンサンブル。そこに、ミルト・ジャクソンのブルージーで真っ黒なヴァイブの音色が混ざり合うことで、MJQならではの唯一無二の個性が生まれていました。

メンバーそれぞれがソロでも素晴らしい活躍を残していますが、私が一番ユニークで興味深いと感じるのは、ドラムのコニー・ケイが、大好きなヴァン・モリソンの名盤『Astral Weeks』(1968年)に参加していることです(ちなみにベースはリチャード・デイヴィスが担当しています)。ロック史に燦然と輝くあのアルバムが持つ、ジャズ寄りの美しい音作りには、コニー・ケイの貢献が計り知れないと思っています。

本作『Last Concert』は文字通り、1974年にニューヨークのリンカーン・センターで行われた解散コンサートの実況録音盤です(発売は1975年)。後に完全版のCDも出ましたが、やはりLP時代の2枚組・見開き(ゲートフォールド)仕様の重厚なジャケットには、格別な味わいがありますね。

演奏は「MJQの名曲の集大成」といった趣で、非常に熱を帯びています。特に驚かされるのがパーシー・ヒースの強靭なベース・ワークです。「これが最後だ」という特別な想いがあったのかどうかは分かりませんが、ダイナミックなベース・ソロからは並々ならぬ気迫が伝わってきます。 彼らのもう一つの名ライブ盤『ヨーロピアン・コンサート』では様式美の極みのような演奏を聴かせてくれますが、本作では、自らその様式美を心地よく壊していくような自由さと力強さがあり、その違いもまた面白いところです。

また、D面1曲目の「Skating In Central Park」では、作曲者であるジョン・ルイス自身が、非常に味わい深いピアノを聴かせてくれています。この曲と聞くと、ビル・エヴァンスとジム・ホールの名盤『Undercurrent(アンダーカレント)』での名演を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、本家はこちらのジョン・ルイスなのです。そうした背景に想いを馳せながら、オリジナル作曲者ならではの情感豊かな演奏に耳を傾けるのも、この盤の大きな楽しみの一つです。

本作はAllMusicの評価でも★★★★★を獲得した、間違いのない名盤といえるでしょう。

A1 Softly As In A Morning Sunrise

A2 The Cylinder

A3 Summertime

A4 Trav’lin’

B1 Blues In A Minor

B2 One Never Knows (From Roger Vadim’s Film “No Sun In Venice”)

B3 Bags’ Groove

C1 Confirmation

C2 ’Round Midnight

C3 Night In Tunisia

C4 The Golden Striker (From Roger Vadim’s Film “No Sun In Venice”)

D1 Skating In Central Park

D2 Django

D3 What’s New?

ここは迷わずA1で!

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